2008年8月
【火曜】 どうしてこんなに歯を削るの?
皆さんは、小さな虫歯だと思ったり、ちょっと凍みるだけ、ちょっと欠けたから詰めものを、というつもりだったのに、「なぜこんなに削るの」「どうして大きな被せをするの」「なぜ神経までとるの」「何度も通わなきゃならないの」と感じたことがあるでしょう?
ぜひ、歯の特殊事情について知っていただきたいと思います。
歯は、胃や腸のようなほかの臓器と違い、定期的な細胞分裂で新陳代謝することがないため、いったん虫歯になると、自然に治ることは絶対にありません。
歯は大きく分けて、外側から、エナメル質・象牙質・神経という三層の構造になっています。
エナメル質は、歯の一番外側の目に見える部分で、非常に硬く、食事や会話、歯軋りによって、一日に何千回と上下の歯同士がこすりあっても磨り減りにくい成分でできています。象牙質は、エナメル質の内側にあります。歯肉の中に埋まっている歯の根っこの部分も象牙質です。神経は、さらに象牙質の中心に存在しています。
エナメル質はもともと虫歯になりにくいのですが、虫歯を作る細菌がエナメル質に小さな穴を開けると、内側にある象牙質は遥かに虫歯が進行しやすい構造のため、虫歯菌にとって非常に住みやすい場所になります。ですから、エナメル質の表面では穴が小さくても、中の象牙質は大きな虫歯になっていることが多いのです。このように、歯の構造に問題もあります。
また、虫歯を作る細菌に感染した象牙質は、完全に取り除かないと細菌が潜むことになり、不完全な状態で詰め物をすると、閉じ込められた細菌が、しばらくたってから暴れるようになり、せっかく治したのに再発することとなってしまうのです。
こうした歯の特殊事情のために、予想外にたくさん歯を削っているように皆さんが感じるのかもしれません。
新しい治療技術や材料が医療保険で認められるよう、私たち保険医協会は運動していきます。
お話したように、まったく削らず、薬を塗るだけで虫歯が治ることは絶対にありません。そのためには、毎日のブラッシングに加えて、定期的に歯科医院を受診することで、早期発見、虫歯予防を心がけましょう。