2008年9月
【金土日】睡眠薬とうつ病
精神科の病気としては、妄想や幻覚などの症状を示す「統合失調症」と、それらの症状を伴わない「うつ病」など、いわゆる精神病と、一般的に心身症とかノイローゼといわれている神経症があります。
以前は、統合失調症やうつ病は長期の入院になることが多かったのですが、最近では、様々な向精神薬と呼ばれるクスリが開発されて、適切に対処すれば、必ずしも入院しなくても、外来だけで落ち着いて普通の生活ができるようになる場合が多くなりました。
その場合、まず何よりも睡眠を確保することが大切です。
精神疾患の場合は、睡眠薬もかなり強いものを使うことがありますが、それぞれ個人差もあります。そのため、向精神薬については、副作用にも十分注意して使用しますので、そんなに不安がらなくてもよいでしょう。
軽いうつ状態や神経症では、ほとんどの人が睡眠障害を起こします。そんな人には比較的軽い精神安定剤や抗うつ剤を主に使います。睡眠薬もいわゆるベンゾジアゼピン系の軽い睡眠薬を使います。睡眠をとれるようにするだけでかなり症状が改善されます。
患者さんによっては、「睡眠薬をのむと習慣性になるのではないか」、「将来、認知症になるのではないか」などと、心配する人がおられますが、睡眠薬を使用していて認知症になった人はありません。認知症は別の問題なのです。
50代の頃から精神安定剤や睡眠薬を使っておられた方が、現在は元気でとてもしっかりした80歳になられています。思春期の摂食障害で手首を切ったり、自殺未遂をしたりと、さんざん周囲をふりまわした娘さんは、5年くらいかなり強い睡眠薬や安定剤を使っておられましたが、現在はまったく薬を飲まなくてすむようになったりしています。
睡眠がとれないと体の方の回復力がまいってしまいます。ですから必要なときには、主治医の診察を受けられて、睡眠薬を上手に利用されればよいと思います。