2008年10月
【金土日】中高年のうつ病と自殺
中高年の男性の自殺が急増し、そのため平均寿命が短縮した、との最近の報道に驚かされた方も多いと思います。中高年とは、一般に40歳頃から65歳位までの期間で、一体この世代に何が起こっているのか考えてみましょう。
現在の中高年層は、主に「団塊の世代」と呼ばれている人々で、戦後のベビーブームによって、突出して人口の多い世代です。学童期には「すし詰め」、青年期には「若者造反」「大学紛争」、社会に出れば「企業戦士」として日本経済を支えるとともに、バブル崩壊後に壮年期を迎えた世代です。
そんな方々が年齢を重ね、身体的衰えを自覚してくるとともに、近親者や先輩の死亡による喪失体験を持っておられます。さらに、我が国全体に見られる、長期の景気低迷によるリストラや、職場における様々なIT化・リストラ等のストレスが重くのしかかっていることが、中高年の自殺の一因になっていると考えられます。
症状としては、他のうつ病と同じく不眠、全身倦怠感、食欲不振等の身体症状、また、抑うつ気分や意欲の低下とともに強い自尊心の低下を引き起こし、それが自責感に結びついて、うつ症状の一つである「自殺念慮」、つまり自己の意志で自分の生命を絶とうという考えや、意志が実際の自殺として実を結んでしまったということです。
基本的に、うつ病は必ず治る病気です。最も重要なことは、中高年の置かれている社会的環境や境遇を周囲の方が理解しつつ、早期発見・早期治療に結びつけ、自殺へと追い込まないように、社会全体がうつ病への認識を深めることが大切であると考えられます。