2009年1月
【月曜】 60歳を過ぎてからの女性器出血
この年代の性器出血は、ほとんどが何か病気によるものです。ぜひ婦人科を受診してください。
性器出血でもっとも多いのは「老人性膣炎」です。閉経後は女性ホルモンの欠乏によって、膣の皮膚が縮んで乾燥しやすくなり、膣を清浄に保つ機能が低下してくると膣炎になりやすくなります。このような状態で性交渉などをすると、膣壁が傷ついて出血が起こりやすくなります。出血量そのものは少なく、厳密な意味での性器出血ではないため、診断は容易にできます。治療は、ホルモン入りの膣錠を用います。
次に閉経して間もない人に、「機能性出血」と呼ばれる不規則な出血が起こることがあります。これは更年期が過ぎてホルモン系のバランスが崩れるために、子宮内膜が過剰に刺激されるなどによって起こります。これもホルモン剤の内服で治療します。
また、60歳を過ぎてからの出血で恐れられているのは、「子宮頸癌」と「子宮体癌」です。しかし子宮癌の頻度は約500分の1と少ないため、過剰に心配しすぎる傾向もありますが、心配だけして医者を受診せずくよくよするのがもっともよくありません。
熟練した婦人科の医師ならば、子宮から細胞を採取する方法で比較的簡単に診断できます。子宮頸部の細胞診は数十秒ですみ、まったく痛みを伴いません。子宮体部の細胞診は多少痛みを伴いますが、ほんの一瞬です。 その他、少量の出血を伴うものに、「卵巣癌」と「卵管癌」があります。
卵巣癌は、細胞診ではほとんど診断できません。超音波検査などで診断できるのは進行している場合です。初期はほぼ無症状なので非常に厄介です。
卵管癌は、これも細胞診での診断は困難で、早期発見が難しく厄介な癌ですが、発病の頻度は非常に低いものです。
不幸にして癌であっても、早期発見すれば手術などの治療によって90%は救命されます。受診が遅れる間に病変が広がって厄介なことになります。癌の進行によって他の臓器、特に肺や肝臓などに転移すると、生命の予後が悲観的です。
その他、ポリープや潰瘍ができていたり、外傷を起こしていたり、皮膚のただれなどがあっても出血する場合があります。いずれにしても婦人科の医師とご相談するようおすすめします。