兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2009年2月

【火曜】 虫歯はうつりますか?―乳児期からの予防を―

 “虫歯はうつりますか”という質問に対し、虫歯は感染症なので「うつる」というのが学術的には正解ですが、しかし、虫歯がうつったという話も一般的ではありません。答えは難しいのですが、うつるとも言えるし、うつらないとも言えるのです。
 お母さんのお腹を出たばかりの新生児の口の中はほぼ無菌状態です。腸内の細菌も棲んでいませんし、口の中に歯がないため、虫歯菌もいません。それが1本、2本と歯がはえてくるに従い、色々な細菌が口の中に棲み始め、その中に虫歯菌も含まれてきます。
 それらの菌は、赤ちゃんのごく近い環境からうつったと考えるのが普通です。中でも育児に深くかかわっている人からうつったと考えられます。親からの影響が最も強いと考えられるため、ヨーロッパの研究者らは、子どもの虫歯の予防をするためには、妊娠した母親の生活や口の中のことから手を打たなければならないと言っています。
 それら厳重な予防方法を実験的に行った地域の子どもの口の中に、虫歯菌のいない子がわずかながら現れているという報告があります。虫歯菌がいないと、甘いものをいくら食べても歯磨きをしなくても、歯周病などは別として、虫歯に限っては心配ないということになります。これらの事実は、虫歯が虫歯菌による感染症でうつるものだという証明になります。
 しかし、一度口の中に細菌の棲み分けが完成した後では、例えば虫歯のひどい人とキスをしたことで他の人の虫歯がひどくなることはありません。食事や生活の習慣によって、歯にプラークつまり、歯垢が付きやすくなったり、成人してからでは、どんなことをしても口の中に棲む多種類の細菌の中から虫歯菌だけを締め出すこともできないのです。生物の世界の不思議さと複雑さを感じます。
 虫歯は生命にかかわらない病気のため軽く見られがちですが、子孫に害を伝えないように、自分の口の中の虫歯菌を減らすのと同時に、口うつしで赤ちゃんに食べ物を与えるようなことは避けるなど、先手、先手の虫歯予防を実践する必要がありそうです。
 いずれにしても大切なのは、より良いプラークコントロールです。かかりつけの歯科医院にご相談ください。

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