2009年4月
【火曜】 大人の歯列矯正
大人の歯列矯正の治療をしようと思われた動機や目的には、かみ合わせや審美的な問題の他、歯並びを整えた方が歯のかぶせものの治療がしやすくなり、よい結果が得られると歯科医院で言われた場合や、悪い歯並びによって歯が磨きにくく歯肉に悪影響を及ぼし、歯周病が改善しにくい場合、などがあります。
歯を動かすにあたって問題になるのは、歯が植っている土台である歯槽骨という骨や、歯肉つまり歯ぐきが健康であるかどうかということが重要になってきます。子どもでは歯周病に罹って骨が痩せているというようなことは少ないのですが、大人では歯周病に罹っている方は多くおられます。そのような場合、歯周病の治療をまず行うことが必要です。そして歯周組織の状態をみながら矯正治療を行います。歯周病の程度によっては矯正治療ができない場合もあります。
治療に用いる装置では、一般的に「マルチブラケット法」といわれる方法で、歯の一つ一つにブラケットという装置を接着剤でくっつけて、それに金属のワイヤーを通して、ワイヤーの力で少しずつ歯を動かして理想的な噛み合わせにしていきます。この方法は、装置を歯の表面に接着させるので他人から見える弱点があります。そこでブラケットを、セラミックなどでできた歯の色に近いものや、金属のワイヤーに歯の色に近い色の樹脂をコーティングしたものがあります。開発当初は金属のものに比べ強度や接着力に問題がありましたが、現在では治療に十分耐える強度になってきています。
次に、歯の表面でなく、歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着して表からは全く装置が見えないようにした「リンガルブラケット」という治療法も進歩して、歯の表に装置をつけて治療するのと変わりない治療効果が得られるようになってきました。さらに数年前より、コンピュータ技術を使って、その人に合った装置をオーダーメイドで作り、治療する方法も開発され実用化しています。
顎がしゃくれていたり、横に歪んでいたりしている患者さんには、一見治ったように見える「カモフラージュ矯正」だけでなく、より理想に近い形に治る口腔外科の手術を併用する外科矯正もあります。
このように、大人の歯列矯正は装置や治療法が進歩しています。特定の疾患や外科矯正は健康保険が使えますが、その他は保険が使えません。矯正治療の専門医にご相談ください。