2009年5月
【水曜】 スポーツと疲労骨折
スポーツを続けることで、繰り返し受ける力によって起こる骨の障害が「疲労骨折」です。金属を繰り返し曲げると小さなひびが入り、ついには折れてしまうことに例えられます。小学生~50歳ぐらいまでは起こると言われ、とくに中学・高校生に多くみられます。
疲労骨折は、体重と大きな筋力を受ける太ももから下、特にすねの骨であるけい脛こつ骨、足の甲の骨であるちゅうそく中足こつ骨に多く、腰の骨であるようつい腰椎、肋骨、骨盤、手首等にも起きます。走るスポーツ種目に多いようですが、種目ごとの動作により骨折の起こる場所が違います。 早めの診察・治療が早い復帰につながり、痛み、腫れが出たら早期に整形外科を受診することが必要です。X線検査は初期変化が出にくく、MRIやCTという機械を使うこともありますが、X線は経過をみるためにとても役に立ちます。
治療の原則は安静にして、痛い動作を完全に中止します。痛みや腫れが強い時は、ギプスで固定することもあります。早期に復帰するためには、原因になる動作だけを中止し、他の筋力トレーニングやストレッチを続けることは重要です。
自己判断でのスポーツ復帰は、治るまでの時間が長くなったり重症化してしまうこともあるため、主治医の判断を待ちましょう。通常2~4カ月で復帰できますが、治療にとりかかるまでの時間が長ければ、治るまでの時間も長くかかります。重症化した時や、トップアスリートが早く確実にスポーツ復帰を希望する場合は、手術を行うことがあります。
再発予防は、原因の除去が大事です。シューズ等の用具、グランドや体育館のコンディションにも目を向け、硬い路面やスパイクを避けること、負担の少ないフォームに変えることも必要です。全身の筋力低下、関節や筋肉の柔軟性の低下も起こるため、トレーニングやストレッチが必要です。
練習再開の時に、急に元の練習量や強度に戻すと、再発の原因になりやすいため、徐々に練習量や質を上げることも重要です。個人差が大きく、体力、筋力等に応じた個別トレーニングが必要です。短期間に結果を求められる時や、精神的負担で充分な安静がとれないために、治るまでの時間が長くなることがあります。指導者やご家族がそのような心理的圧迫をなくす配慮も重要です。
女子選手は、成長とともに体脂肪が増えて、骨や関節等に影響が出ることもあります。無理に体脂肪を減らすと、女性ホルモン量が減って骨が弱くなり、疲労骨折を起こすことが問題になっているため、食事指導も大事です。