2009年11月
【木曜】 顔面神経麻痺
顔面の表情をつくる筋肉が急に動かなくなって顔が歪んでしまい、片側の目をつぶることができなくなったり、唇がしっかり閉じなくなったりすることがあります。これは「顔面神経麻痺」と呼ばれる病気で、脳の障害による顔面神経麻痺と、顔面の筋肉に運動の指令を伝える脳神経の障害による顔面神経麻痺とに分けられます。
脳の障害による顔面神経麻痺の場合は、脳卒中や頭部の外傷などに伴って顔面に麻痺を生じるので、通常は麻痺した側の手足の動きも悪くなっています。また顔面の麻痺に関しても、顔の上半分の眉や額の部分の筋肉は動かせるのが特徴です。
一方、脳神経の障害による顔面神経麻痺の場合は、顔の半分が麻痺するために片側の額にシワがよらない、片目だけがウインクできない、口笛を吹くことができない、口角からよだれがこぼれるなどの症状がみられます。さらに顔面神経には、味覚や涙・唾液の分泌に関係したり、鼓膜の緊張を調整する神経も含まれているので、これらも障害されて、味がおかしくなったり、涙や唾液が上手く出なかったり、耳に音が強く響いたりすることもあります。
脳神経の障害による顔面神経麻痺では、原因がはっきりしない「ベル麻痺」と呼ばれるタイプが多数を占めます。最近ではこのベル麻痺の一部にウイルスが関与している可能性が指摘されています。このほかには、帯状疱疹ウイルスにより、麻痺側の耳の周辺に水疱や痛みを伴って顔面神経麻痺が生じる「ハント症候群」があります。これもウイルスが関与しているようです。
いずれにしても、麻痺症状は顔面神経に炎症が起こって神経が腫れてむくんでしまうために起こります。そのため治療としては、早期では神経の腫れをとるための飲み薬が用いられたり、必要に応じてウイルスに対する飲み薬が用いられます。その他にもビタミン剤や、血液の循環を良くする飲み薬なども併用されます。さらに神経の血流を良くするために麻酔科による治療もあります。このような治療によって麻痺の大部分は改善しますが、長い場合には回復に数カ月かかることもあります。 麻痺が生じたら放置しないで、直ちにかかりつけ医を受診して、適切な診断、治療を受けることをおすすめします。