2010年6月
【水曜】 最近の肝炎治療法と肝がん-インターフェロン、核酸アナログ
日本の死亡統計をみると、ここ数年4万5千人余りの肝臓病による死亡があります。その内訳は肝がんが3万5千人、肝硬変などによる肝不全が1万人余りです。しかもその原因を詳細にみてみると、肝がんの原因は80%がC型肝炎ウイルス、15%がB型肝炎ウイルスによるものです。また、肝不全の原因は50%がC型肝炎ウイルス、20%がB型肝炎ウイルスが占めています。
現在、日本には150万~200万人程度の「ウイルスキャリア」と呼ばれるC型肝炎ウイルス持続感染者、また120万人程度のB型肝炎ウイルス持続感染者がいると推定されています。ただウイルスキャリアの多くの方々は症状がほとんどないこともあって、自らが感染していることに気づいていません。血液検査を受けて、肝炎ウイルスチェックをされることが大切です。
まずC型慢性肝炎に対する治療では、1992年に保険認可されたインターフェロン療法は長足の進歩を遂げました。とりわけ、21世紀に入って欧米で開発された、週1回の注射薬であるペグインターフェロンと、飲み薬であるリバビリンの併用療法によって、日本で最も数が多く、しかも最も難治性であるウイルス量の多い1型の患者に対しても、50%以上でウイルスが駆除される良い効果、すなわち著効が得られるようになりました。著効が得られた患者の肝がんの発生リスクは1/5~1/10に低下しています。
一方、B型慢性肝炎に対する治療では、1980年代に保険認可されたインターフェロン療法だけでなく、21世紀に入って開発された核酸アナログと呼ばれる飲み薬の治療によって、B型肝炎ウイルスの増殖が抑えられ、肝炎の鎮静化をもたらします。また、B型肝硬変に対しても、核酸アナログは有効で、肝不全の進行が抑えられるようです。ただB型慢性肝炎の場合、これらインターフェロンや核酸アナログが肝がんの発生を抑えるかどうかは、現在意見一致は得られていません。
こうしたインターフェロン療法や核酸アナログ療法は、国の肝炎医療費助成対象として、保険診療の患者負担金1万円または2万円を超えた金額が助成されます。認定されてから原則1年間とされています。B型肝炎、C型肝炎の早期治療のために、こうした制度を利用することをおすすめします。