2010年8月
【金土日】医療費明細書と診療報酬
2010年8月より医療機関による医療費明細書の発行が原則として義務化されました。以前より、窓口で支払う領収証には、「診察」「検査」「投薬」などのまとまった項目ごとに、診療報酬の点数と一部負担金が記入されていましたが、今回は、より細かい内訳についても、それぞれの名称と点数を記入したものが出されるようになりました。
しかし、次のような問題点があります。
第1に、医療の内容は複雑な規則で決められ、専門用語で表示されているため、説明や理解に時間がかかります。そのため医療機関の現場に新たな負担と混乱をもたらします。
第2に、最も人に知られたくない病気に関する個人情報が漏れる危険性が高くなります。中にはがんや精神疾患のように本人にも知らせていない場合もあります。
第3に、明細書の発行システムを整える十分な手当てがないまま、全ての医療機関に発行を義務づけることは、医療機関のみに責任と負担を負わせ、窓口でのトラブルや待ち時間の増大などが生じます。
第4に、「明細書は無料で発行される」と報道されていますが、その発行費用は再診料に加算されているため、決して「無料」ではありません。また、窓口の負担金は1点10円で端数を処理するため、領収証の金額とは合わない場合があります。
情報開示の必要性は、医療機関と患者との信頼関係の中で決まってくるものです。明細書の発行は義務づけではなく、個別に対応していくべきものであり、保険医協会は「発行義務化の撤回」を求めています。
さて、診療報酬とは医師だけの報酬と誤解されがちですが、医療サービス全ての種類と値段を決めた公定料金のことです。その中には看護師、薬剤師などのすべての医療従事者の医療サービス料、さらに薬や血液検査、レントゲン検査の費用も含まれています。また、診療報酬は、営利つまり儲けを目的としないで、安全・安心の医療を提供するために作られた国民皆保険制度の大事な仕組みでもあります。
政府が診療報酬を抑制し続けたため、医療崩壊が多くの地域で起こっています。私たち保険医協会は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法第25条を実現するために、診療報酬改善による医療の充実を求めています。