2010年10月
【水曜】 糖尿病の新しい薬―インクレチン関連薬―
世界中で蔓延する糖尿病は、今最も対策が必要な病気です。日本では予備軍を含め、約2,210万人の患者がいると考えられています。
糖尿病は、自覚症状のないまま進展し、全身の血管や神経を傷めてしまいます。その結果、目の病気である「網膜症」が起きたり、腎臓の機能が落ちて人工透析を余儀なくされたり、動脈硬化が促進されて「心筋梗塞」「脳卒中」「足壊疽」などの合併症が起こってくる恐ろしい病気です。国内では年間に約3,500人以上が失明し、約1万3,000人が新たに人工透析を受け、3,000人以上が足を切断しているといわれています。
国内では最近、今までの薬に加えて、「インクレチン関連薬」と呼ばれる新しい糖尿病治療薬が登場し、注目を集めています。
インクレチンとは、小腸などの消化管が出すホルモンの総称で、このホルモンが血糖値を下げるインスリンの分泌を巧妙に調節していることが解ってきました。インクレチンの働きを強めたり、まねをしたりする薬が開発され、これは従来の治療薬をしのぐ効果があるのでは、と期待が寄せられています。
理由の1つは、インクレチン関連薬は体重が増える副作用が見られないので、肥満傾向のある糖尿病患者さんにも使用できます。今までの薬は脂肪細胞にブドウ糖をため込み、体重を増やす傾向がありました。もう1つは、低血糖が起こりにくいことです。夜中の低血糖に苦しんでおられた患者さんに救いの手を差し伸べる可能性があります。
ただし、いくら新しい薬が開発されているといっても、手遅れになってから治療を始めてはさすがに元に戻すことはできません。早期に発見して、早期に治療することがとても大事になっています。まずは検診を受けること、また、検診の機会のない方でも、年に1度はかかりつけ医で血糖測定を受けることが望まれます。少しでも血糖値が高くなっていたら、今後のことについて医師と相談することが必要です。