2010年12月
【水曜】 高齢者高血圧症の治療
高血圧の方が血圧を下げる治療を行うのは、脳卒中や心筋梗塞などの死に至る心臓血管の合併症を防ぐためです。そのため現在では、血圧を上が140、下を95という値を第一目標にしています。糖尿病やその他の病気が合併している方の目標値はもう少し低くしています。
高齢者の方は一般に数種類の病気を持っておられます。また、お薬が体の外に出る時間も長くなりますので、高齢者の方のお薬の使い方は、若い方とは同じようには使えません。若い人と比べて、同じ体重でも、効き過ぎたり、副作用が起こることがあります。
高血圧の治療についても同じことが言えます。高齢になると動脈が硬くなってくるため、上の血圧は高くなり、下の血圧は低くなると言う特徴になります。また、血管が硬くなっていることで、夜間の血圧が下がりにくくなります。
さらに、高齢者の場合は、血圧の変動が激しく、診察室に入ると家庭で測った血圧より高くなる、「白衣(はくい)現象」という白衣高血圧症があります。これは、少しの緊張でも血圧に大きく影響するからです。そして、高血圧が長く続くと心臓肥大が起こり、心臓の予備力が減り、突然の変化に対応しきれず、死亡に繋がることがあります。
そのために、日頃ご家庭で血圧を測ることをお勧めします。特に目覚めの時の血圧は忘れずに調べてください。その他、ご自分のどういう状態の時に血圧が上がっているかということを覚えておいてください。血圧が急に上がることはたいへん危険です。正義の怒りでも、腹を立てると血圧は急上昇します。健康にはよくありません。ご注意ください。
高齢者の方は、特に体質により、お薬の使い方が異なってきます。そのため、かかりつけの主治医を持ち、体質を把握してもらって、治療されることをお勧めします。心臓血管病は死亡の大きな原因になっています。それだけに血圧を安定に保ち、元気に過ごされることを期待したいものです。