2010年12月
【火曜】 新しい歯のブラッシングの考え方
いまから数十年前、「さん。さん。さん。」運動というのがありました。むし歯予防で毎食後、食後三分以内に三分間と言うものでした。いまではほとんど聞かれません。それはどうしてでしょう。実はこうした運動では、短時間に力強く磨きすぎてしまいがちになり、歯を傷つけてしまうことが指摘されています。
みなさんは歯磨きを連想したとき、ザクザクザクなどの音を思い浮かべないでしょうか。こうしたブラッシング時に大きな音がするような磨き方は悪い磨き方と言っていいでしょう。歯科医師が患者さんへの指導の際に決まって言う言葉があります。「歯は磨いてはいけません。歯についた汚れをぬぐい取るように掃除してください」と言っています。
そして力が強すぎる場合には、「歯はうるし塗りの食器です。汚れているからといってカネダワシでこする人はいないでしょう。歯ブラシはよごれをぬぐい取る道具だと覚えておいてください」とも指導しています。
力強く磨くとどのようなことになるのでしょうか。はじめに柔らかい歯茎が犠牲になります。歯茎は柔らかいため傷つけられるとどんどん短くなり、歯の根が露出してしまうこととなります。露出した歯の長さだけ、支えるべき歯の周りの骨を失ったこととなるのです。
いわゆる歯槽膿漏は、歯を支える骨が歯周病菌などによって膿になり、漏れ失ってしまう病気です。力強く磨く結果、歯を支える骨を失わせることになるのはあまりにもったいないことです。
傷つけずに行えるブラッシングを歯科医院で指導を受けるようにしてください。また定期的に掃除ができているかなど検診もよいかもしれません。歯はかけがえのない組織です。大切に守っていきましょう。