2010年12月
【年末年始】味覚の障害
最近、食べ物の甘さが感じられないとか、何を食べても苦く感じるといった、味覚障害の人が増えています。味覚には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つがあります。味覚は主に、舌の味蕾(みらい)という味を感じる細胞が集まった部分で感じます。この味蕾の機能が低下すると、食べ物の味がわからない、味が薄いと感じる、本来と違う味に感じる、辛い味はわかるのに甘味だけがわからない、などの症状が起こります。
こうした味覚障害は、全身の病気、怪我による神経の損傷、薬の副作用、食生活の乱れなど、様々な原因で起こります。最近は、味覚障害の患者さんの多くに亜鉛が不足していることが注目されています。亜鉛は、味を感じる細胞の新陳代謝に必要な物質なので、不足すると味覚障害が起こります。亜鉛の不足は、偏った食生活による摂取不足や、食品添加物が亜鉛を過剰に排泄させることで起こります。また抗生物質や血圧の薬など、様々な薬が体内の亜鉛を減少させることもあります。
治療はまず、どの味覚が感じられず、どの程度なのかを調べる簡単な検査から始めます。そして、原因となる病気はないか、原因となる薬を飲んでいないか、食生活は乱れていないかなどを調べます。原因となる病気がある場合は、その病気の治療に専念します。薬が原因の場合には、飲むのをやめたり、医師と相談して他の薬に変えたりします。また、血液検査によって亜鉛の欠乏がわかれば、亜鉛を補給します。亜鉛は、牡蠣や煮干しなどに含まれます。食材をまんべんなく摂っていれば、不足するようなことはありません。
予防としては、日頃から健康や食生活に関心を持つことが大切です。食事はファーストフードやインスタント食品ばかりに偏らないようにしましょう。規則正しく、バランスよく食べましょう。
味気のない食生活は人生の楽しみを減らします。健康な身体を維持するのにも良い影響を与えません。「最近、食事が味気なくなってきた」と感じたら、一度、耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。