2011年1月
【火曜】 乳歯のむし歯と歯並び
「乳歯のむし歯があると歯並びが悪くなってしまう」というと怪訝に思われるかもしれません。今でもたまに「どうせ生え代わるからそのままにしておけばいい」という方もいます。
確かに、乳歯のむし歯だけを考えればそのとおりかもしれません。しかし、一度にすべての乳歯が抜けて永久歯が生えて来るのではなく、徐々に生え変わります。特に乳歯の奥から生えてくる第一大臼歯、別名「6歳臼歯」は、歯並びを考える上でとても大事な歯です。矯正歯科では「歯並びの鍵」といわれています。乳歯にむし歯があると口の中にむし歯菌が多くなり、とてもむし歯になりやすい環境になります。またこの第一大臼歯は磨きにくくとてもむし歯になりやすい歯です。これがむし歯になると当然歯並びに悪影響を及ぼします。
さらに重症のむし歯になると、硬いものをしっかりと噛むことが出来なくなるので、顎の発育にも影響を及ぼします。
また歯というのは、隣同士の歯が押し合いへし合いして並んでいます。乳歯の前歯は、次に生えてくる永久歯のために、顎の発育に伴って隙間が出来てきますが、奥歯はきっちりと密着していて隙間はありません。歯と歯の間がむし歯になると、最初は歯と歯の間に穴が空いた状態になります。そのうちにその穴の部分が、奥から生えてくる6歳臼歯に押されて段々とつぶされ、隣り合っている乳歯の距離が縮まります。そうなると、その下から生えてくる永久歯の場所がなくなり、次の歯がいい場所に生えることが出来なくなり、ガタガタした歯並びになったり、最悪の場合は引っかかって、生えることができなくなります。
悪いことに、乳歯の奥歯の歯と歯の間は永久歯と違い非常にむし歯になりやすく、初期の段階で発見するのもむずかしいものです。また乳歯の特徴として、歯の中の神経である歯髄は、歯と歯の間の非常に近い部分にあるため、すぐに神経の治療が必要になります。神経の治療のあとでは、普通の詰め物では乳歯は薄いのですぐに割れてしまいます。それではやはり次に生えてくる永久歯の場所の確保が難しくなります。よく見た目が悪いといわれますが、将来的な見た目を考えて歯に銀色の「乳歯冠」をかぶせる必要も出てきます。
定期的に歯科医院を受診され、むし歯ができないようなブラッシングなどの予防法の指導を受けられることをおすすめします。