2011年4月
【金土日】もの忘れは認知症の始まりか?
「もの忘れ」が目立つ老人をみると、「ボケちゃって…」と言ったりしますが、それが認知症かどうかの判断は慎重を要します。年をとると、健康な老人でも「もの忘れ」が起こります。ある意味、人間はものを忘れることによって、人生をまっとうすることができるといっても過言ではありません。
人は毎日の睡眠によって、脳に記録された記憶のうち不要なものは入れ替えられ、日常生活上大切なものだけが記憶されるようになっています。特に人の名前などは忘れやすくなりますが、「ボケが始まっている」などと安易に言わないことが大切です。
健康な老人の「もの忘れ」は脳の自然な老化現象によるものです。特徴は「ど忘れ、物の置き忘れ、勘違い」などです。次の3つがポイントです。「忘れてしまった!」と言う自覚を本人が持っていること、前後のことを話したりすると思い出すことができるということ、日常生活に問題が起こるほど進行していないこと、この3点です。
これとは違い、認知症では、脳細胞の病気が原因で次第に進行し、「我を忘れ」、そして物忘れが多いという自覚も乏しくなります。例えば、自分のいる場所、食事をしたことを忘れるなど、自分が行った行動自体を忘れ、判断能力は低下していきます。
認知症が進むと、会話の内容が乏しくなったり、社会的な出来事への興味や関心が低下し、時には「通帳や印鑑を誰かが盗んだ」という物盗られ妄想をいだいたりします。日常生活に混乱が生じて介助が必要な状態も起こります。
この場合、叱るのではなく、納得させることが大切です。また老人の注意をひくときは、2つ以上のことを一緒に言うのではなく、1つずつ伝えることも大切です。老人を敬い、老人のペースに合わせた対応を心がけてください。
このように、通常の「もの忘れ」と認知症の「もの忘れ」は異なった状態であり、「もの忘れ」が認知症の初期症状とは断定できません。しかし、「もの忘れ」が急に起こったり、進み方が早いように感じたら、適切な検査と診断を受けるために、主治医に早めに相談して下さい。