2011年5月
【火曜】 唾液の働きと歯の病気
唾液ってどんな働きをしているのでしょうか? 3つの働きについてお話します。
1つ目は、唾液は消化を助ける役割をしています。唾液の中にはでんぷんを麦芽糖(ばくがとう)に分解する役割を担っているアミラーゼという消化を助ける酵素が含まれており、麦芽糖はさらに十二指腸や小腸でブドウ糖に分解されて、体じゅうのさまざまな組織、細胞の栄養源になります。また、食べ物に適度な水分と粘り気を与え、飲み込みやすくしたり、胃での消化をしやすくする役割もあります。
2つ目は、口のなかの、免疫をつかさどる役割をしています。唾液の中には、免疫をつかさどる物質が大量に含まれており、食べ物や、まちがって口にした物の中に含まれている有毒な細菌や物質を取り除く役割をしています。これらの物質は、イムノグロブリンやリゾチームなどといった名前ですが、いわば、体を守る第一関門の最前線の役割とも言えます。
3つ目は、口の中の湿度を適度に保つことによって、おしゃべりをしたり、口を自由に動かしたりする潤滑油の役割もしています。歯や歯ぐきを乾燥から守り、虫歯や歯周病を防ぐとともに、唇にも適度な潤いを与え、美容にも大きな影響を持っています。
以上、3つの働きについてお話ししましたが、もし、唾液が出なくなれば、唾液の持つこれらの役割が失われることになり、生活や健康に大きな支障をきたすことになりかねません。
残念ながら、唾液は年齢とともに段々と分泌量が減ってきます。また、自己免疫の病気である膠原病のなかの「シェ-グレン症候群」という病気などで、唾液が出にくくなることもありますし、薬の副作用などで唾液の分泌が落ちることもあります。唾液の分泌が少ないままほっておくと、口の中では、虫歯が多発したり歯周病がひどくなったりします。また、全身の健康にも悪影響を及ぼします。
医科や歯科医院で検査や治療を受けることができますので、気になる方はぜひ相談されることをおすすめします。