2011年8月
【火曜】 東日本大震災と口腔ケア
3月11日に起こった東日本大震災は多大な被害をもたらしました。あらためて、被災者のみなさんにお見舞い申し上げます。
震災から半年近くが経過しましたが、いまだに仮設住宅の順番を待って避難所生活をしておられる方が少なからずおられます。我慢も限界の状態が近づいており、今後さまざまな健康被害が心配されます。
とりわけ、高齢者の死亡の大きな原因の一つである「誤嚥性肺炎」は、震災のあと増加することが、阪神淡路大震災の調査からも指摘されています。今日はこの問題と、その有力な予防法である口腔ケアについてお話します。
誤嚥性肺炎はどうして起こるのでしょうか。風邪などに併発して起こる肺炎とはちがって、誤嚥性肺炎は、口の中で繁殖した細菌が原因で起こります。高齢者や体力の低下した人では、食べ物を飲み込む力、つまり嚥下力が低下していますので、食物や唾液といっしょにこれらの細菌が誤って、空気の通り道である気道に入ってしまいやすいのです。
大災害のあとでは、強いストレスで免疫力が低下することや、十分に歯磨きなどをすることができずに、口の中が不潔になってしまいやすいことが、肺炎が増加する主な理由とされています。肺炎は死亡率も高く、注意が必要な病気です。
誤嚥性肺炎を予防するためにはどうすれば良いでしょうか。まず、食事の際にはできるだけ誤嚥しにくい姿勢を取ることが大事です。できるだけ座った姿勢で食事をするようにしましょう。それと、何よりも大事なのが、お口の中を清潔に保つことです。食後の歯磨きや入れ歯の消毒をしっかりしましょう。大災害のあとでは、飲み水さえ不自由になったり、歯ブラシなどの生活物資も不足という事態に陥り、口腔のケアはおろそかになりやすいので、十分な配慮が必要です。
最後に、被災者を健康被害から守るには、一刻も早くきちんとした生活を取り戻すことが必要です。兵庫県保険医協会は、国に対して、被災した住宅の再建や、住民の健康を守る医療機関の再建を早急にすすめるため、公的責任を果たすよう求めています。ともに声をあげていきましょう。