2011年9月
【月曜】 増加する卵巣がん
卵巣は、子宮の両脇に一つずつある親指大の楕円形の臓器です。生殖細胞である卵子がそこで成熟し、放出されます。それとともに周期的に女性ホルモンを分泌しています。
卵巣がんは、日本では欧米と比べて発生頻度が少ないと言われてきました。しかし、近年増加傾向にあり、2005年には8,304人が卵巣がんになり、この患者数は、同年に女性でがんに罹った人のうちの約3%にあたります。卵巣がん患者は50歳~69歳で約半数を占めています。卵巣がんの恐ろしさは、早期発見が困難なため、発見されたときには進行しているために治療方法に限界があることです。
卵巣がんが早期の卵巣に限られた状態で、診断および治療が行われた場合の5年生存率は90%程度と良好ですが、実際は卵巣がん全体では5年生存率は50%と低いのが現状です。そのことを詳しく説明しましょう。
卵巣がんの初期には、不正性器出血や下腹部の違和感などの症状が何もなく、別のことで婦人科を受診したときに、たまたま発見されることが多く、初期に発見されるのは20%と言われています。多くは卵巣以外の部位にがん細胞が進行した状態で発見され、治療法は手術や薬物によるものですが、近年治療法が向上したとはいえ、その再発率は50%を上回っており、有効な治療法の確立が待たれています。
卵巣がんの集団検診は、技術的に不可能なので、成人女性は年1回婦人科を受診し、子宮がん検診と同時に、卵巣に異常があるかどうか調べるための診察と超音波検査を受ける必要があります。また、不正性器出血などがあって婦人科を受診したときには、卵巣の状態を尋ねることも大切です。
卵巣に腫瘍が発見されても、85%は良性のものと診断される場合がほとんどです。その場合は手術も必要なく、何もせず経過を観る場合も少なくありません。しかし、将来的に腫瘍が増大して手術の必要が生じたり、悪性化したりする可能性もあるので、必ず定期的に受診し経過をみることも重要です。
女性の性器がんでは、子宮がんのみでなく卵巣がんにも十分注意する必要があることにご注意ください。