2011年10月
【木曜】 膵がんの最近の話題
膵臓は胃の後ろにあり、胃十二指腸にくっついている臓器です。その中にある管から、主に血糖を下げるホルモンや、消化酵素を出します。飽食の時代では常にフル活動させられるため、糖尿病や膵炎になりやすくなります。
膵がんは、見つかりにくい位置にあるため発見が遅れ、進行が早いため手遅れになることが多く、21世紀に入ってもやっかいながんの代表です。
危険因子としては、第一に遺伝があげられます。4~8%には家族歴に膵がんがあります。第二は糖尿病です。膵がん患者の既往歴には、糖尿病が17.7%と最も高頻度で存在します。米国では膵がんと糖尿病の合併率は60~80%と報告され、その多くが膵がん診断の2年以内に発症しているそうです。第三は膵炎です。慢性膵炎の膵がん発生率は一般の人に比べ10~20倍高いといわれます。嗜好品では、タバコは膵がんになる危険率を増加させ、酒は日本人男性の膵炎の50%近くの原因であり、ひいては膵がんの原因となるでしょう。
膵がんの症状としては腹痛、黄疸、腰や背中の痛みで始まることが多く、次いで体重減少、消化不良症状等ですが、12.4%は無症状のこともあるといわれます。
検査はまず、エコー、CTですが、「CA19-9(シーエー・ナインティナイン)」や「CEA(シーイーエー)」と呼ばれる血液検査の値も参考になります。膵臓の中の管にチューブを入れ、細胞を採取して悪性の判定をする方法もあります。
治療法では、新しい抗がん剤が開発され、応用されています。古い抗がん剤では1年以上の生存はほとんどありませんでしたが、手術不能例だったもののなかには、この新しい抗がん剤と放射線療法を組み合わせた治療により、2年以上生存する症例も出てきました。膵がんはすぐに大きな血管を侵しますが、その場合でも技術の発達で切除することができるようになりました。手術と他の治療を組み合わせることにより、今後さらに良い結果が期待できると思われます。