2011年11月
【木曜】 漢方治療と尿路疾患
東洋医学では、中国・後漢の時代に張仲景という名医が、「傷寒論」という急性疾患に対する治療の本、「金匱要略」という慢性疾患に対する治療の本を書き、これが漢方の教科書とされています。
現在の中国医学は、明や清の時代の医学を基礎としていますが、日本の漢方医学は唐の時代に中国へ留学していた日本人たちが、当時の中国の医学書や薬を日本に持ち帰り、中国とは異なる、日本独特の気候・風土・食生活・習慣に合わせて作り上げた医学です。そのため厳密には、中国医学と漢方は異なります。
現代医学では、血液検査やX線・超音波検査等、ありとあらゆる検査結果から病気の場所を探り、それに合った治療をしますが、これに対して漢方の診察は、主に患者さんの訴え以外に、脈を診たり、舌を観察したり、お腹を触って状態を判断します。そして、患者さん1人ひとりの体質を重視して、同じ病気でも漢方薬の処方が異なることがあります。また漢方の独特な考えに「寒熱」という考えがあり、冷えている人には温める漢方薬を、熱を持っている人には冷やす漢方薬を処方します。これは診療科目の違いを問わず共通した考えです。
泌尿器科では尿の色を参考にして、漢方の考え方によって、「薄い色の尿は冷えている、濃い色の尿は熱がある」と判断します。湿った熱が原因であったり、老化によって腎臓の働きが弱ったり、消化器が弱ったり、肺が弱ったり、血の巡りや気の巡りが弱くなっても、排尿の状態に影響します。西洋医学は腎臓や膀胱のみに注目しますが、漢方医学では、消化器・肺・心臓・腎臓・肝臓という5つの臓器のバランスが大切と考えます。必ずしも1つの臓器に注目して治療するのでなく、それ以外の臓器の不調にも注目するため、患者さんが訴えている症状の場所以外の臓器を治療して、症状が改善することもあります。
日本東洋医学会では、現在2,420人の漢方専門医がおり、東洋医学的な考えから患者さんに適した漢方薬を処方してもらえます。ご希望の方はぜひ相談してみてください。