2011年11月
【水曜】 胃食道逆流症について
内視鏡検査でとくに炎症やびらんの所見がなくても、胸やけなどの症状が現れることがあります。「胃食道逆流症」とは、胃の内容物の逆流によって不快な症状、あるいは合併症を起こした状態をいいます。
主な症状としては、第1に胸やけです。これは胸骨後方の灼熱感をともなう症状ですが、人によって表現はまちまちで、喉のつっかえ感や違和感、胸痛などもあります。痛みに関する症状だけでは、狭心症との区別が困難な胸の痛みを訴える方もあります。胸やけの原因のほとんどは、胃液中の胃酸が逆流によって発症しますが、そうでない場合もあります。
第2の症状は「呑酸(どんさん)」と呼ばれるものです。これは胃の内容物が口や喉に戻ってくる感覚で、黄水(きみず)があがってくる、酸っぱいものが上がってくるなどと表現することがあります。
第3は睡眠障害です。やや意外ですが、夜間睡眠時には横になっているために酸の逆流が起こりやすく、深い睡眠を妨げて目を覚ましやすくなります。
第4は、慢性の咳や慢性喉頭炎は胃食道逆流症と関連性が高いといわれています。
以上のような症状から、診断は比較的容易ですが、胃や食道の悪性腫瘍が隠れていることがあるので、一度は内視鏡検査を受けるようおすすめします。
次に合併症についてお話します。これには「逆流性食道炎」「食道出血」「食道狭窄」などがあります。
炎症と出血は、酸が粘膜を障害することによって起こります。喉のつかえ感や嚥下障害があっても、実際には狭窄がないことが多く、内視鏡で食道を拡張する手術を要するのは、胃食道逆流症の重症例で全体の5%以下です。
治療は、食生活習慣の改善や、胃酸を抑制する薬であるPPI(プロトンポンプ・インヒビター)と呼ばれる飲み薬ですが、空気の食道内逆流や食道内圧の上昇などによって起こる胸やけには、PPIでも効果がみられません。
少しでも症状を軽くするためには、食後すぐに横にならないこと、刺激物や炭酸飲料の摂取を減らすこと、ゆっくりよく噛んで食べることなどが有効です。
胸やけなどの症状がある方は、かかりつけ医に相談することをおすすめします。