2012年1月
【火曜】 「海外の歯科技工物」問題って何?
歯科技工物という言葉をご存じでしょうか?
入れ歯や被せ物のように、歯科医師が患者さんの口の中の型を採り、歯科技工士という技術者に依頼して作製する人工臓器のことです。
当然ながら、歯科技工士には高い技術や知識が要求されます。専門学校や4年生大学を修了の後、国家試験に合格しなければなりません。また、国内で作られたこれら技工物は、材料、製作方法など厳しい基準を設けることにより、高い安全性が保障されています。
ところが、このような規制や技工士資格さえ問われない海外生産の歯科技工物が急増しました。2005年9月に厚生労働省が条件付ながら、事実上容認する通知を出してからです。しかもその条件とは、歯科医師の責任で自費扱いとするもので、憲法25条で国民の健康を守る立場である国の責任については明確にしていません。
現在では、毎月約30万個の海外歯科技工物が「医薬品」ではなく、100円均一商品と同じ「雑貨」として輸入 されています。
2010年に中国製の歯科技工物から、有害物資や国内では禁止されている金属が検出されたと言う衝撃的な報道がありました。厚生労働省はこの時に実態調査に乗り出しましたが、国内分で16個、全世界で64個を調べただけの調査で、「特に問題は無い」と結論づけました。
2008年に全国保険医団体連合会が実施した患者調査では、7割以上の患者さんが海外生産の歯科技工物に同意しないと答えています。
日本の歯科技工物は、歯科医師と歯科技工士の共同作業によって、その品質と安全性を確保して来ました。薬事法、歯科医師法、歯科技工士法による規制はそれを支えて来ました。これらの規制を緩和したり、規制の及ばない特例を認めることは、国民の健康にとってプラスに働くことはありません。
兵庫県保険医協会は、海外生産の歯科技工物を決して容認できません。それ自体の安全性の問題だけでなく、過剰な価格競争によって、本来良質で安全であるはずの国内生産の歯科技工物が圧迫されるからです。
私たち医療従事者は、患者さんともに良質な歯科医療の提供を今後も求めて行きたいと思います。