2012年5月
【木曜】 滲出性中耳炎のはなし
鼓膜の内側の中耳に液体が貯まり、難聴や耳詰まり感を起こす病気があります。これが、滲出性中耳炎です。
幼少児と老人に多くみられます。最近、特に幼少児に増えてきています。痛みがないので気付きにくく、聞き返しが多い、返事をしない、テレビの音を大きくする、話し声が大きい、などから気づかれることがあります。
この病気の原因はよくわかっていません。急性中耳炎に引き続いて起こったり、鼻が悪い場合が多く、炎症が先立つ症例が目立ちます。5~6歳の子どもが一番多く、年齢が増えるにつれて少なくなり、10歳を過ぎると珍しくなります。しかし、放っておくと「真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)」や、治療の困難な「癒着性中耳炎」など、重大な結果を引き起こすことがあります。
症状は、難聴、耳詰まり、自分の声が響く、耳に水が貯まった感じなどです。しかし、幼少児では自分から訴えることが少なく、周囲の人が気づいたり、たまたま耳鼻科にかかって見つかることもよくあります。片耳だけの場合は特に発見しにくくなります。
診断は、鼓膜の状態を観察したり、聴力の検査、あるいは鼓膜の動きを確認するチンパノグラムという検査で行います。
鼓膜の状態は変化に富んでいますから、顕微鏡でよく観察します。聴力検査では、音の伝わり方が悪い伝音性難聴が見つかります。チンパノグラムでは、液が貯まっているかどうかを調べます。
治療は、「耳管(じかん)通気法」と言って、鼻腔と中耳との間に空気を入れる方法がよく行われます。しかし、液がはっきり貯まっている時は、鼓膜を切開して液を取り除く必要があります。鼻が悪い場合も多く、鼻の治療も欠かせません。
それでも治りにくい場合は、「中耳換気チューブ」と言う小さな管を鼓膜に入れることもあります。
治療は長期間かかることが多いので、気長に続けることが大切です。