2012年7月
【金土日】更年期のイライラとおちこみ
日本人女性の平均寿命は延び、2010年には86.39歳となっています。それに比べて閉経は52歳前後でほとんど変わらず、長寿になった分、閉経後の女性ホルモンの低い状態で過ごす期間が増えたといえます。
完全に閉経するまでのホルモンの不安定な時を更年期といい、英語では「the turn of life」と表現し、まさしく人生の折り返し点にあたります。
婦人科領域では、排卵が不規則となってアンバランスな女性ホルモン分泌が起こり、子宮のがんや筋腫、内膜症などの病気を誘発したり、脳下垂体に直接影響を与えて、自律神経失調が起きてきたりします。
のぼせ、発汗、血圧の上昇、めまい、動悸、物覚えの悪さ、物忘れなど自分の力では何ともしがたい様々なことが起こり、強い不安感が襲ってきます。生活面でも子育てが終わり、親離れ、夫の退職、失業、親の介護や死別など、環境が大きく変わってきます。思うようにならないことばかりで、イライラして、自信がなくなり、落ち込み、何もする気にならなくなります。これが引き金となってうつ状態になったりすることもよくあります。
しかし、以前のように出来なくなっても当たり前なのです。今の自分を認め、自分を責めることはやめましょう。そして、悩みは信頼できる人に相談にのってもらい、それでもつらいと感じたら、神経科、心療内科、婦人科を受診してください。必ず治ります。少しでも長く楽しく過ごせる時間を持ちましょう。
婦人科での主な治療法は、ホルモン補充療法で「HRT」と呼ばれています。排卵前の女性ホルモンである卵胞ホルモンには、膣剤、塗布剤、経口剤、注射剤などがあります。必要により排卵後の女性ホルモンである黄体ホルモンを併用する時もありますが、この場合生理のような出血をみることもあります。また、大腿骨骨折による寝たきり老人を増やさないためにも、骨粗鬆症の治療も大切です。症状に応じて漢方薬、自律神経調整剤、精神安定剤、ビタミン剤、カルシウム剤などを処方します。