2012年8月
【水曜】 膝の痛み-変形性膝関節症-
膝の痛みの原因で高齢者がわずらう多くは変形性関節症です。これは関節の軟骨がすり減ってきて、その下の骨が露出して、関節を覆う膜が炎症を起こすため、痛み、動かしにくい、腫れ、変形などを伴います。
これら変形性関節症に代表される関節疾患は、痛みや歩行困難のために高齢者の生活機能を低下させ、生活寿命を短縮させている重大な生活習慣病です。ある報告によると、日本人の変形性関節症の推定有病者数は、膝の関節で2400万人、症状を伴うものに限っても約800万人で、非常に高い有病率となっています。
予防は、膝に負担がかからないように、まずは減量と太ももの筋肉である大腿四頭筋を鍛えて強くする訓練が有効です。痛みが強ければ、正座、和式トイレ、階段、布団や畳などの膝に負担のかかる生活から、階段を避けるようにして、洋式トイレ、椅子やベッドなどのより膝に負担の少ない生活へ移行することも有効です。
膝の痛みが持続する場合には、整形外科の専門医を受診し、レントゲン検査などで現在の状態を診断してもらうことが大切です。
治療は、まずは手術以外の治療を行います。減量、リハビリテーションや生活様式の指導、プール内での歩行訓練なども有効です。次に、シップ薬や消炎鎮痛剤などの投薬、ヒアルロン酸の関節内注射などで治療します。
病状が進行すれば手術、主には人工関節に置き換える手術となります。最近では人工関節の成績は非常に向上してきています。術後20年以上の良好な成績も報告されており、術後30年以上を目指して開発されてきています。また、日本人の生活様式に合うように、より膝が曲がり、術後により痛まないように工夫されてきています。
最近は、人工関節の治療を専門にしている施設もあります。近くの整形外科の先生と相談して紹介していただくか、直接、人工関節専門病院を受診してください。人工関節の手術は専門病院で受けることをおすすめします。
痛みに耐えることは美徳ではありません。早期に適切な治療を受けて、毎日をより健康的に有意義に過ごしましょう。