2012年8月
【月曜】 モノがゆがんで見える黄斑変性症
黄斑変性症は、テレビの健康番組でよく取り上げられる目の病気です。放送された翌日には必ず何人かの方が「大丈夫でしょうか」と受診されるほど、関心の高い病気の一つです。黄斑とは、目の奥にある網膜の中心にあります。
網膜の奥には3つの膜があり、網膜色素上皮、ブルッフ膜、脈絡膜と呼ばれていますが、加齢黄斑変性は、これらの膜の老化による変化のために発症します。
この変化は、「萎縮型」「滲出(しんしゅつ)型」の二つのタイプに分けられます。
萎縮型は、網膜が薄くやせたために起こるものです、滲出型では、脈絡膜から通常と異なる新しい血管、これを新生血管と呼びますが、この血管が網膜色素上皮の下、または網膜の下の方に侵入し、腫れや出血を起こします。腫れを起こせば物が歪んで見え、出血を起こせばその部分は見えなくなってしまいます。
危険因子としては、老化以外に喫煙、高血圧、肥満などが考えられていますが、最近では特有の遺伝子異常を持った人に多いこともわかってきています。
診断には、眼底検査をまず行います。滲出型ではさらに、眼底の血管を造影して新生血管の状態を詳しく調べます。検査は、眼底に弱い光を当て、戻ってきた波によって黄斑部の断層像を見ます(光干渉断層計・OCT)。最近の技術の進歩によって画面がさらにはっきりしますので、なくてはならない検査となっています。
治療は、病態によって異なります。萎縮型には残念ながら有効な治療がないのが現状です。従って、現在の主な治療は滲出型で、新生血管からの腫れや出血を抑え、視力低下を食い止めることを目的としたものになります。
滲出型に対する治療は、まず、レーザーを用いる治療法(光線力学的療法・PDT)があります。これは、特殊な薬を腕から注射し、薬が新生血管に溜まってきたところで弱いレーザー光線を照射することによって、周囲の網膜を痛めず新生血管だけを抑えるという治療です。次に、新生血管の進行を抑える薬である抗新生血管剤を眼の中に注射する治療法があります。
現在はこの2つの治療法を、単独または組み合わせて使うことによって視力の維持だけではなく、回復も可能となってきました。今後はさらに、新しい治療が開発されることでしょう。
モノがゆがんで見えだしたかなと思った方は、ぜひ眼科医院に受診されることをおすすめします。