2012年10月
【火曜】 介護報酬改定後の問題点
介護保険サービスの全国の利用者は、先ごろの調査で517万人といわれています。しかし、利用料の1割負担とともに、介護保険料がアップしたことから、ますます利用しにくいとお考えの方も多いと思います。
今回は、「介護報酬」という、介護保険によるサービスの公定料金が今年(2012年)4月に改定されてからの問題点についてお話します。
第1は、「医療から介護に給付を移す」という流れがすすめられたことです。具体的には、脳血管や骨・関節の病気に対するリハビリを、2年後には医療保険から廃止する方針が出されたことや、介護保険利用者の通所リハビリを介護報酬に誘導する改定となったことなどです。
第2は、生活援助の時間区分が変更され、60分あればできた援助を無理やり45分に切り詰めることで、掃除、洗濯と片付け、買物と食事作りなどを、分刻みでこなさなくてはならなくなり、利用者との会話すらできなくなったことです。お年寄りの暮らしぶりやヘルパー業務の実情を無視したものと言わざるを得ません。
第3は、呼吸器疾患や身体障害のある方に、「喀痰吸引」と呼ばれる医療行為を今までは医療専門職が行ってきました。これを一定の教育・研修だけで介護職員等に行わせることができる仕組みになりました。安全性の確保を徹底し、必要に応じた見直しが求められます。
その他、多くの基本サービス費が引き下げられ、医療機関の入所施設や介護事業所・訪問看護事業所など、事業の運営を困難にさせる問題点が多々あります。
介護は私的な問題として解決できるものではなく、憲法に基づく国民の生存権を保障するものとして、国が責任を持って解決すべきです。厚生労働白書でも、医療・介護分野はその充実を図ることで将来の不安を取り除き、消費を促し、経済を活性化させることも期待できると明記されています。
兵庫県保険医協会は、介護保険の利用料や保険料の負担を増やすのではなく、国が公費負担を増やして介護サービスを充実させるよう、患者さん・国民とともに運動をすすめたいと思います。ともに声を上げていきましょう。