2013年4月
【木曜】 乳がんは早期発見が大切
乳がん治療は、20年前(1990年代)に比べると、各人に合った治療に近づいている時代になってきています。乳がん死亡率も10%以上低下し、再発乳がんの患者さんの余命も1.5倍以上に伸びています。特に、「分子標的薬」と呼ばれる薬の登場は大きな福音をもたらしました。
乳がん治療の分野では、欧米の治療戦略が日本に着実に取り入れられていることが、この成果をもたらした大きな理由になっています。
いま日本で目指すべき最も重要なことは、「乳がん治療開始は、早期乳がんで始まること」です。5㎜以下の乳がんであれば、悪性度が高い乳がんでも、最も辛く苦しい抗がん剤治療は不要とされ、ほぼ全ての患者さんが乳房温存の外科治療を受けることができます。
しかし、患者さんの多くは、進行がんの状態で外来を受診されている現実があります。欧米各国では、マンモグラフィによる乳がん検診の受診率は70%以上ですが、日本の受診率は20%台に留まっています。まだ日本では、「しこり」の乳がん発見が、乳がん患者の大多数を占めています。
乳がん検診は、4年前から開始された「無料クーポン券」が40歳、45歳、50歳、55歳、60歳の女性に直接配布されています。ところが、クーポン券による受診率も20%台にとどまっています。より多くの女性がクーポン券を利用されることが大切です。その上、繰り返しの受診を望みたいものです。
昨今、総合病院の乳腺外科の認知度も上昇し、乳腺外科のクリニックも各地でオープンしています。少しの体調の悪さがあれば内科の先生に相談されるように、乳房の違和感などによる不安があれば、乳腺外科を訪れるようにしましょう。乳腺外科担当のクリニックは、診断領域で総合病院と同じような専門性で診療できるように努めています。
乳がんがしこりになる前に治療されるよう、検診と診断がお互いにリンクして、治療へと橋渡しするシステムの構築はできつつあります。市民の皆様も、気楽な気持ちで乳がん検診を受けて、乳腺外科の受診をおすすめします。