2013年7月
【金土日】線維筋痛症(せんいきんつうしょう)
線維筋痛症は、原因不明の全身の筋肉や関節の痛み、及び不眠・うつ病などの精神神経症状を起こす病気です。これに伴う症状には過敏性腸症候群、過活動膀胱、ドライアイ、ドライマウスなどがあります。
近年、世界的に増加しつつあることが指摘され、わが国では全人口の約1.7%、約200万人の患者が存在すると推定されています。この病気は、あらゆる年齢層にみられますが、性別では約80%が女性で、特に30~50歳代の、いわゆる働き盛りの女性に多く起こります。
激しい持続性の疼痛によって日常生活も甚だしく制限されてしまうため、社会的に大きな問題となっています。また小児では、不登校の児童・生徒の中にもこの病気が存在するとも考えられています。
線維筋痛症が起こる原因は不明ですが、現在は、「セロトニン」という神経伝達物質との関連が推測されています。
この病気の診断は、一般的には、①3ヵ月以上持続する疼痛、②首や背中から膝までの左右18ヵ所の圧痛点の中で、指を用いた圧迫で強い痛みを感じた部位が11ヵ所以上あるかどうかを検査する、という基準を用います。*
線維筋痛症と明確に区別すべき病気には、膠原病(強直性脊椎炎、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、強皮症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群)や、慢性疲労症候群などがあります。しかしこれらは血液検査などで除外することが容易にできます。
この病気の治療は、原因が不明であるため確実なものはありません。通常は抗うつ薬、抗けいれん薬、向精神薬、抗不安薬などを、単独または数種類を組み合わせて使用します。
抗けいれん薬のなかで「リリカ」という薬は、2012年にわが国初の線維筋痛症の治療薬として、医療保険が使えるようになりました。**
さらに、慢性疼痛の方に安全性の高い鎮痛薬として「トラムセット配合錠」(トラマドールとアセトアミノフェンの合剤)という薬も使われます。***
以上のように、線維筋痛症はきわめて多彩かつ複雑な病態を示すために、リウマチ専門医、整形外科医、精神科医との協力によって診断と治療を行う必要があります。
* 圧痛点の場所は、後頭部、下位頚部、僧帽筋、肩甲骨上部、第2肋軟骨接合部、肘外側上顆、臀部、大転子後部、膝などの9ヵ所の左右です。
** 抗うつ薬として、レメロン、レフレックス、トリプタノール、サインバルタ(いずれも一般名)を用います。また、抗けいれん薬として、ガバペチン、プレガバペチン(いずれも一般名)を用います。
*** 薬物療法では、その他、ノイロトロピン大量、サリグレンやサラジェン、抗リウマチ薬のサラゾピリン、非麻薬系鎮痛薬のトラマドールなども使われます。