2013年8月
【水曜】 直腸がんの治療
直腸は、大腸のお尻に近い部分にあり、成人では約15~20cmあります。直腸の分類は、上から直腸S状部、上部直腸、下部直腸、そして肛門管につながっています。
直腸の構造は、輪切りにすると、4つの層(内側から粘膜層(M)、粘膜下層(SM)、固有筋層(MP)、外膜(S))で成り立っています。
がんの治療法は、どの層まで深く進んでいるか、近くの膀胱や小腸・腹壁、男性の前立腺、女性の子宮にがんが広がっているか、さらに、周囲のリンパ節や肝臓や肺など、離れた臓器に転移があるかどうかによって変わります。
まず、深さが浅く粘膜の下層までのものを早期がん、それ以上進んだものを進行がんと呼んでいます。
早期がんの段階では、長さの最大が2cm未満のものは、内視鏡手術の対象となります。内視鏡手術には、単純なポリープ切除術や、腫瘍の周囲粘膜を含めて切りとったり、粘膜の下層まで切り取る方法があります。早期がんでも長さが2cmを超えるものは、腹腔鏡手術を含めた外科的手術の対象となる可能性があります。
進行がんは、周囲のリンパ節へ転移する確率が高いため、お腹を切る外科的手術の適応となります。また、周囲の臓器に広がっているものは骨盤の中にある臓器ごと取り出すことが必要になります。そのため術後に排尿や、排便、性機能の障害などが生じる場合があります。
直腸下部の進行がんでは、多くの場合、人工肛門が必要になります。ただし、がん細胞があまり広がっていなければ、手術前に放射線治療を行って腫瘍を小さくすることで、本来の肛門を保存できることもあります。
進行がんで離れた臓器に転移があるために根治手術が出来ない場合は、抗がん剤などを用いる化学療法や、放射線治療、さらにその両者の併用などが行われます。
最後にがん治療全般に言えることですが、直腸がんも早期発見で身体に負担が少ない治療法を選択できます。そのため、40歳以上の方は各自治体などで行われている大腸がん検診を積極的に受けましょう。