2013年9月
【金土日】認知症のはじまり
認知症、特にアルツハイマー型認知症のはじまりとして、「軽度認知障害」という段階が注目されています。
これは、記憶障害などの認知機能の低下が少しあるものの、日常生活には大きな支障がないことから、認知症とまでは言えない状態を指します。
各種の調査によると、一見正常と思われる65歳以上の人のうちの約5%は、この軽度認知障害にあてはまると考えられています。そして、これらの軽度認知障害の人たちの中から、年間10%程度が認知症に進むと報告されています。
一方で、長期に経過を追っても最終的に認知症に至らない人や、認知機能が回復する人がいることも分かりました。すなわち軽度認知障害は、色々な背景因子や基礎疾患を持った人たちが含まれた集団なので、その将来的な変化は様々であるということです。現在、いろいろな検査によって将来の進行を予測する研究が世界的規模で進められています。
軽度認知障害は多くの場合、最近起こった出来事を憶えていないといったことで気づかれます。これも本人が、もの忘れを自覚する場合からあまり気にしていない場合までいろいろです。一般にもの忘れの自覚がない人の方が、将来的にアルツハイマー型認知症に移行しやすいようです。
また、日常生活では自分の身の回りのことはできていても、仕事や家事などの作業にはそれなりの困難があり、約半数は一定の介助を必要とします。この場合も、仕事や家事の障害が強いものほど認知症へ移行する可能性が高いとされています。
さらに米国の報告では、半数近くになんらかの精神症状を伴うとされており、その半分がうつ、半分弱が無気力でした。うつを伴う軽度認知障害の場合も認知症への移行に注意が必要です。
物忘れがすなわち認知症のはじまりとは限りませんが、日常生活に特に問題がなくても、年齢相応を超えた記憶の障害が疑われる場合は、かかりつけの医療機関で相談してください。