兵庫県保険医協会

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健康情報テレホンサービス

2013年10月

【火曜】 慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)

 お年寄りの頭部外傷に「慢性硬膜下血腫」という病気があります。

 これは軽い頭部外傷、例えばタンスの角で頭を打ったり、あるいは転倒して頭を打ったりというだけでも、受傷してから1~2カ月後に、頭痛や手足のしびれ、運動麻痺、精神症状の障害などが出てくることがあります。

 慢性硬膜下血腫を発症する頻度は、70歳以上の高齢者では10万人に7.4人と報告されています。症状が出てきた時には、すでに患者さん自身が外傷のことを忘れていることがありますので、注意が必要です。

 またこの病気の20~30%は、外傷以外の原因でも起こります。脳や心臓の病気に対する「抗凝固療法」と呼ばれるものや、長期にわたる血液透析、そして飲酒による肝障害などが言われています。

 一般的には頭部CT検査を行います。受傷から日の浅い時期では、頭蓋骨と大脳の間に水が溜まった「硬膜下水腫」という状態になります。片側だけの場合も両側にできる場合もあります。時間の経過とともに、水腫に血液が入り込んで血腫に置き換わり、血腫の場所は徐々に大きくなります。病状が軽い場合には自然治癒することもありますが、血腫がある程度の大きさになると頭痛や麻痺が出たり、精神症状を現します。

 診断がつけば、速やかに外科的手術を行うことが一般的です。慢性硬膜下血腫の血液は、不思議なことに流動性のため固まりません。標準的な手術法は、局所麻酔をして頭蓋骨に1-2カ所の穴を開け、血腫を吸引した後に生理食塩水で十分な洗浄を行います。手術時間は20-30分程度です。

 再出血を起こす確率は10%程度ありますが、手術による生命予後は極めて良好です。症状の改善を最もよく自覚できる手術と言えます。

 軽い頭部外傷後、1~2カ月経ってから頭痛が出た場合や、手足の麻痺が現れた場合、精神症状とくに認知症が急に進行する場合は、神経内科・脳神経外科を受診することをおすすめします。

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