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健康情報テレホンサービス

2013年11月

【火曜】 入院前にお口のケアを-周術期口腔機能管理-

 厚生労働省の統計などから、自分自身または家族が、がんや心臓病で入院、手術を経験する可能性はかなり高いと言えます。そのため、手術や入院前には歯科を受診して、スムーズな治療や回復ができるように口の中を治療しておくことが大切です。

 なぜ入院前に歯科を受診する必要があるのでしょうか。

 口のなかはとても細菌の多い部位であり、がん・心臓・臓器移植などの全身麻酔を必要とする手術や、がんの放射線治療・化学療法など、体が疲れ弱まるような治療を行うと、普段は悪さをしない口の中の細菌が活発になり、様々な合併症を起こしたり、手術や治療の妨げとなる可能性があるからです。

 例えば、全身麻酔の手術中は、口から喉の奥に人工呼吸器のチューブが入ります。そのため、ぐらぐらの歯があると、チューブが入るときに歯が抜けたり折れたりする可能性があるため、そのような歯は前もって治療しておく必要があります。また、口の中の衛生状態が悪いと、細菌がチューブと一緒に気管の奥に押し込まれ、それらが肺炎の原因となることもあります。口や喉、食道の手術などでは、手術の傷跡から口の中の細菌が感染する恐れもあります。

 手術後やがんの放射線や化学療法中などは、体の抵抗力が下がるため歯が痛くなっても治療をすることは難しくなります。がんの治療が長引いたために歯や歯ぐきの炎症から敗血症を起こすと、命にかかわることもあります。また口の衛生状態が悪いと、がん治療の副作用でできた口内炎に細菌が感染し、痛くてがん治療が続けられず長引くといったこともあります。さらに心臓病などの場合は、歯周病や重度なむし歯を放って置くと、口の細菌が心臓や血管に感染し、深刻な合併症(感染性心内膜炎など)を引き起こしてしまうこともあります。

 「周術期口腔機能管理」とは、大きな治療を行う前に、あらかじめお口のケアや歯科治療を行うことで、お話したようなリスクを防ぎ、安心して手術や治療を受け、回復を助ける効果を期待するものです。

 入院前はもちろん、突然の入院や大きな手術が必要になった場合に慌てなくてもよいように、普段から定期的にかかりつけの歯医者さんを受診して、歯の治療やクリーニングを行っておくことも大切です。

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