2014年3月
【水曜】 ヘリコバクター・ピロリ菌の話
ピロリ菌と言う言葉が最近話題になっています。ピロリ菌の正式な名前は「ヘリコバクター・ピロリ菌」と言います。長いので、省略してピロリやピロリ菌と呼ばれています。
胃の中は、食べ物を消化するための強力な胃酸で満たされているために、バイ菌はいないと考えられていました。しかし30年ほど前に、胃酸の中でも棲むことができるバイ菌をオーストラリアの研究者が発見しました。それがピロリ菌です。名前はどことなくかわいい響きですが、実は胃潰瘍や胃がんなどさまざまな病気と関わっています。
胃潰瘍は、ストレスや暴飲暴食が原因と言われていますが、実はピロリ菌が深く関係しています。ピロリ菌を持っている人がストレス、暴飲暴食、タバコの吸いすぎなど、胃に負担をかけた時に潰瘍をつくりやすいのです。持っていない人は、少々のストレスがあっても潰瘍を作りません。
何度も胃潰瘍を繰り返している方は、抗生物質を使って胃の中のピロリ菌を完全に取り除けば、ほとんど再発しなくなります。この治療は、胃や十二指腸の潰瘍の最も有効な治療として広く行われています。
また、昔は胃がんの原因は家系や遺伝と言われていました。しかし、これは間違いです。ピロリ菌こそが胃がんの原因なのです。ピロリ菌が胃の中に棲みつくと胃炎を起こします。胃炎が続くと胃がんができやすくなるのです。
もしピロリ菌を持っていても、抗生物質を使ってピロリ菌を完全に取り除いてしまえば、胃がんになりにくくなることが最近の研究で分かってきました。
ピロリ菌を取り除く治療は、抗生物質を2種類と胃酸をおさえる薬、併せて3種類の薬を1週間飲みます。この治療で約7―8割の方は、ピロリ菌を取り除くことができます。もし、この最初の治療でピロリ菌が消えなくても、抗生物質の組み合わせを変えた別の治療があります。
ピロリ菌を取り除くことで、胃の様々な病気を予防できる時代になりました。たかがバイ菌、されどバイ菌です。
ピロリ菌を取り除く治療を行うには、まず内視鏡検査やX線検査などで、ピロリ菌感染と胃炎の有無などを診断する必要があります。お近くの消化器内科を受診するか、かかりつけの先生にご相談してください。