2014年5月
【火曜】 診療報酬改定で何がかわったのか その1
診療報酬とは、医療サービス全ての種類と値段を決めた公定料金です。全国の病院や診療所、歯科医院、調剤薬局などの料金が、今年の4月から変わりました。
診療報酬は、医師や歯科医師だけの給与と誤解されがちですが、その中には、看護師や薬剤師などすべての医療スタッフの専門的なサービス料、さらに薬や血液・X線検査などの費用も含まれています。また、営利つまり儲けを目的としないで、安全・安心の医療を提供するために作られた国民皆保険制度の大事な仕組みです。
「受診抑制」や「医療崩壊」という言葉をよく耳にされているように、全国各地で地域医療の疲弊が進行しています。
診療報酬について、今月は3つの特徴をお話します。
第1は、半ば強引に入院患者を追い出し、通院や在宅での治療に誘導することで、十分な医療が受けられないという「医療難民」と呼ばれる人が増える懸念があります。特に、手厚い看護が必要なベッド数を絞り込み、急性期の入院治療は入院できる期間を短くする、長期間の療養患者は早期の退院を迫る、在宅療養に力を入れる診療所や病院の機能強化を図るというものです。
第2は、4月からの消費税8%への増税による医療機関への影響、いわゆる「損税」拡大の問題です。公的医療保険制度は非課税であるため、患者さんには消費税を負担してもらえない仕組みになっていますが、診察や治療に必要な薬品や検査機器には消費税がかかり、医療機関が支払っています。今回の改定で、診察料や入院料の診療報酬が少し上げられましたが、個別の治療項目は引き下げられたため、損税の解消になっていません。年金が下げられ、公共料金や諸物価が値上がりする中で、患者さんもたいへんですが、医療機関はさらに負担を強いられています。
第3は、全国の開業医が政府に働きかけたことによって、一部の改善がありました。
前回(2012年)の改定では、入院治療を行う病院や診療所は、管理栄養士を配置するよう義務づけられましたが、今回は、19床未満の有床診療所と呼ばれるところでは、地域の事情からスタッフの確保が困難との声が出され、政府に働きかけて義務化は撤回されました。
また、介護保険の利用者が、病気になって治療が必要になっても、看護師による点滴注射や、介護度の重い人のリハビリテーションも、条件付きながら改善されがなされました。
兵庫県保険医協会は、全国の開業医とともに「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条を実現するために、診療報酬改善による医療の充実をさらに求めています。
来月は、医院や歯科医院の、通院や在宅での治療を中心にお話します。