2014年12月
【木曜】 下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の話
静脈には、血液が逆に流れないようにする弁があります。長時間の立ち仕事や妊娠時に、脚の静脈に大きな圧力が加わると、この弁が傷つき、その結果として静脈の流れが悪くなったり逆流したりして、脚の静脈が腫れてきます。これが下肢静脈瘤です。
軽度のうちは見た目が気になる程度ですが、長い経過の内に、静脈がはれたり曲がりくねったりして、足のだるさ、重たい感じ、こむらがえりがみられるようになります。さらに放っておくと、足の皮膚に色素沈着がみられたり、治りにくい皮膚のただれが起こったりします。また、静脈瘤の中に血の固まりである血栓ができて、急に赤くなったり痛みが出て、歩けないほどになることもあります。またその血栓が肺へ飛んでいくことによって肺動脈が塞がって、重い呼吸困難になることもあります。これは最近ではエコノミー症候群として知られています。
治療法は、初期の段階では「医療用弾性ストッキング」を履くことをすすめていますが、履きにくいこと、また夏場は足が蒸れてくるため手術を希望される方が多くなります。
初期から中等度に対する治療には「圧迫硬化療法」があります。この治療法は、拡張した静脈瘤内に薬を注射し、数日間弾性包帯で圧迫する方法です。これにより静脈瘤内に血栓ができ血液が流れなくなり、静脈瘤を摘出したのと同程度の効果が得られます。
中等度の場合は、現在一般的には局所麻酔で行う手術があります。太ももの股に近い場所と膝上に局所麻酔をして皮膚切開し、この場所にある静脈を糸で縛ります。所要時間は30分~60分の簡単な手術で、入院の必要もありません。この手術により下肢の静脈圧が低下して、拡張した静脈瘤は徐々に縮小し、症状は軽快します。
重度の場合は、入院して「ストリッピング手術」という下肢静脈を抜き取る治療を用います。これは全身麻酔や腰椎麻酔をして行います。
最新の治療法として話題になっているのは、レーザーを用いて下肢静脈に熱を加えて閉塞させる方法です。この治療法は今後の治療の中心になっていくものと思われますが、高度な技術と設備が必要であり、行っている病院は限られています。
いずれにしても、かかりつけの医師に相談し、必要であれば専門医を紹介してもらってください。