2015年3月
【金土日】五月病という病名はあるか?
学校に入りたての学生に5月頃多く見られる「五月病」があります。新しい生活に夢中でいる間はいいが、それがひと段落する5月頃に、知らずしらずのうちに蓄積されていた心身の疲れや、新しい環境や人間関係等についていけないストレスのために、やる気が出ない、塞ぎ込んでしまう等の状態をこう呼びます。
また、新社会人の場合も、新人研修が終わり、実際の仕事が始まった6月頃に見られることが多いため、「六月病」と呼ばれることもあります。
しかし、これらは正式な病名ではありません。
医学的には、このように環境の変化についていけないことで起きる精神状態を「適応障害」と判断します。但し、適応障害は生活の変化が起こってから1ヶ月以内の発症です。
適応障害の主な原因は、①初めての独り暮らしや時間の使い方等、新しい環境についていけない。②新しい人間関係が思うようにいかない。③入試や入社等の目標を達成した後の、燃え尽きた状態。④想像していた新生活と現実とのギャップについていけない、等の4つが考えられます。
2週間以上気分が沈みがちといった状態が続く場合は、「うつ病」や、うつ状態と躁状態を繰り返す「双極性障害」等が考えられます。6ヶ月以上続く適応障害は他の診断名に移っていきます。長引く時は精神科を受診した方がよいでしょう。
うつ病は、真面目な人が発症しやすいと言われていましたが、そうとも限らないことが分かってきました。「新型うつ病」という呼ばれ方がされる「非定型うつ病」という病名がその一例でしょう。このような人は、周囲からうつ病とは気づきにくいので、「どうせ五月病だから、時間がたてば治るだろう」と軽く考えてしまうかもしれません。その他に、五月病と思っていたら、長年の発達障害が社会に出ることにより目立ってくる場合があります。児童青年が専門の精神科医による適切な診断のもと、環境の調整が必要です。
体調や気分の異変が続くようであれば、適応障害や気分障害、発達障害等の可能性が考えられます。状態をそのままにしておくと、治療の遅れが症状の悪化にも繋がります。抗不安薬や抗うつ薬の投与などの治療によって、症状の改善が期待できます。
いつもと様子が違うことを自覚したら、自分で判断せず、早めに心療内科や精神科を受診してください。