2015年3月
【火曜】 乳歯のむし歯と歯並び
「乳歯にむし歯があると歯並びが悪くなってしまう」というと怪訝に思われるかもしれません。今でもたまに「どうせ生え代わるからそのままにしておけばいい」という方もいます。
確かに、乳歯のむし歯だけを考えればそうかもしれません。しかし、一度にすべての乳歯が抜けて永久歯が生えて来るのではなく、徐々に生え変わります。特に乳歯の奥から生えてくる第一大臼歯、別名「6歳臼歯」は、歯並びを考える上でとても大事な歯です。矯正歯科では「歯並びの鍵」といわれています。
乳歯にむし歯があると、口の中全体がむし歯になりやすい環境になります。当然歯並びにも悪影響を及ぼします。またこの6歳臼歯は磨きにくく、とてもむし歯になりやすい歯です。さらにむし歯が重症化すると、硬いものをしっかりと噛むことができなくなるので、顎の発育にも影響を及ぼします。
また歯というのは、隣同士の歯が押し合いへし合いして並んでいます。乳歯の前歯は、次に生えてくる永久歯のために、顎の発育に伴って少しの隙間ができます。
これに対して奥歯は、きっちりと密着していて隙間はありません。そのため歯と歯の間がむし歯になると、最初は歯と歯の間に穴が空いたような状態になります。そのうちにその穴の空いたような部分が、奥から生えてくる6歳臼歯に押されて段々とつぶされ、隣り合っている乳歯の距離が縮まります。そうなると、その下から生えてくる永久歯の場所がなくなり、次の歯がいい場所に生えることができないので、ガタガタした歯並びになったり、最悪の場合は引っかかって永久歯が生えてこなくなります。
悪いことに、乳歯の奥歯の歯と歯の間は永久歯と違い非常にむし歯になりやすく、初期の段階で発見するのもむずかしいものです。また乳歯の特徴として、歯の中の神経(歯髄)が、歯と歯の間の非常に近い部分にあるため、すぐに神経の治療が必要になります。神経の治療の後は、普通の詰め物では乳歯は薄いのですぐに割れてしまい、次に生えてくる永久歯の場所の確保がやはり難しくなります。よく見た目が悪いといわれますが、将来的な見た目を考えて歯に銀色の「乳歯冠」をかぶせる必要も出てきます。
定期的に歯科医院を受診され、むし歯ができないようなブラッシングなど、予防法の指導を受けられることをおすすめします。