2015年6月
【火曜】 4月の改定で介護はどう変わったか!?①
2015年4月の改定で、介護報酬がマイナス2.27%、国全体で1,130億円が削減されました。削減の理由は、特養ホームなどの内部留保や介護サービスの収支差率の高さにあるといわれています。しかし、大企業の内部留保には目をつぶり、公的介護保険の担い手である介護事業者と一般の中小企業を単純に比較するのは、乱暴な議論ではないでしょうか。
そもそも介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を決めたものです。在宅や施設で、介護に関する新たな取組みや技術を介護の報酬にしっかり反映させるとともに、マンパワーの環境づくりにも大きく影響しています。
しかし、介護報酬が低い水準に抑えられてきたため、介護業界は労働環境・処遇が悪く、慢性的で深刻な人手不足が続いています。今回の改定で、介護職員の給与引き上げなどを行った事業所への加算点数が拡充されましたが、小規模事業所にはハードルが高いうえに、現在の賃金水準は全産業平均で月10万円も低いという調査があり、十分とはいえません。
また、こうした介護報酬引き下げだけでなく、利用者の負担増・サービス引き下げも予定されています。今年の8月からは、合計所得が160万円以上(年金収入のみの方は280万円以上)ある65歳以上の方は、原則として窓口負担が1割から2割に引き上げになります。施設入所者の食費や居住費への補助も、一定の預貯金などがあれば支給されなくなります。さらに、特別養護老人ホームも原則として要介護3以上の人しか入所できなくなります。
そして、今回の改定の大きな目玉は、要支援者へのサービスの一部を国が行う介護保険制度から外し、ボランティアやNPOなどが主体となる市町村の「新総合事業」へ移すことです。要支援者へのサービスについて国が責任を放棄するものです。
介護は家庭の中だけで解決できるものではなく、国民の生存権を保障するものとして国が責任を持つべきものです。これ以上の「介護崩壊」をストップするためにも、国庫の負担を拡大し、介護報酬の引き上げ、介護保険料の引き下げをはかるとともに、介護事業については国が責任を持って実施するよう介護事業者とともに声をあげていきましょう。
来月は、市町村の「新総合事業」について詳しくお話しします。