2015年7月
【水曜】 高齢者の肺炎と結核
風邪が治らず、長引くと肺炎を起こすというのが一般的な経過です。ところが高齢者では、風邪症状は軽いのに、ここ2~3日食欲がなくて元気がないという場合に、肺炎を起こしているということが多くみられます。
胸の聴診で異常がなく、のどの腫れや、発赤も見られない場合でも、普段より元気がなく食欲もないようであれば、まず感染の重症度を見る血液の迅速検査を行います。
また、呼吸困難があるかどうかは「酸素飽和度計」という指先につけて計る簡便な測定器があります。そして血液検査で、白血球数が多い時や炎症反応が高値を示す時、呼吸困難を伴う時には、胸部エックス線写真を撮ります。それで肺炎の診断ができます。
一昔前なら、肺炎と診断されれば入院治療が原則でしたが、今日では、食事が何とか摂取できて呼吸困難がないケースでは、外来通院で治療することが可能になっています。
肺炎の原因と考えられる細菌を想定した治療薬が選択され、毎日1回の抗生物質の点滴注射が必要な場合もあれば、飲み薬だけでよい場合もあります。治療を始める前に採取した喀痰の検査結果は2~3日後に分かりますから、最初の治療が適切だったかどうかを判断します。最初の治療の効果がなく病状が進行してしまったら、入院治療も考えなければならないでしょう。
糖尿病や高血圧、肝障害、腎障害を持った高齢者の方は、肺炎の治療をする際には抗生物質の量を制限することも考慮しなければなりません。現在飲んでいる薬の種類や投薬量の情報を、主治医に正確に伝えておくようにしてください。
肺結核の治療歴がある方は、結核の再発も考えておかなければなりません。また長期に煙草を吸っていた方なら、肺がんも見逃さないようにしなければなりません。
肺結核や肺がんは、受診時の喀痰検査の結果と胸部エックス線写真を、過去のものと比較することで見つかることがあります。一般的な肺炎の影との違いがみられる場合や、最初の治療がうまくいっていない場合は、胸部エックス線写真の肺炎の影の中に肺がんが隠れていることもありますから、呼吸器専門診療科のある病院でCT検査等を行って、正確な診断のもとで治療をする必要があります。