2015年10月
【木曜】 家での誤った応急処置
休日や夜間の医療機関が閉まっている時に、急病やケガなどに困ってしまった経験は、どなたにもあると思います。的確な応急処置がひじょうに役に立つことは言うまでもありません。
しかし、昔から言われてきた応急処置には、誤ったものがいくつかあります。それらについてお話しましょう。
まず、鼻血の話です。「鼻血が出た時は上を向いて、首の付け根をトントンと叩くと止まる」と言われていますが、これは誤りであり、場合によると出血した血液が喉に詰まって、危険な状態を引き起こす可能性があり、決してすすめられる処置ではありません。鼻血が出れば、鼻の付け根を5分ほど指で押さえるだけで、ほとんどの場合は止まります。
次に、ケガで出血した場合です。「出血している所の心臓に近い部分を強く縛る」というのはむずかしいことです。縛ることよりも、出血したところにタオルなどを当てて強く押さえることが最もよい止血方法です。
また、発熱に対して、昔から「おでこを冷やす」と言われています。
熱中症のように高熱が出た場合には、病院などで行うクーリング法、つまり身体の一部分を冷やす方法は、身体の中を走る太い血管のところを冷やします。例えば、両側の首の付け根(両頚部)、両脇(両腋窩)、両足の太ももの付け根(両鼠径部)などが効果的です。
さらに、子どものひきつけや、大人のてんかん発作の場合です。「舌を噛まないように、口にタオルを入れる」と言われていますが、これも誤った方法です。逆に、口に入れたもののために嘔吐したり、窒息を引き起こしかねないためひじょうに危険です。まずは、ベルトを緩めたりシャツのボタンをはずして、意識が戻るまで付き添ってあげてください。
これら以外にもたくさんあります。応急処置はひじょうに大切ですが、なかなかむずかしいものです。
応急処置が必要となる事態が起こらないことがもっとも幸せなことであることは言うまでもありません。しかしいつ起きるかは予測がつきません。もしここに挙げたような事態が生じたら、すぐにかかりつけの医師に相談してください。そのために日頃から、何でも話せるかかりつけの医師を持ちましょう。