2015年10月
【火曜】 よく噛むことと認知症予防
10月8日は、語呂合わせで「イレバデー」です。みなさんも口の中のことで関心を持っていただいていると思います。
食事の時によく噛むことによって、食べ物を細かく噛み砕き、唾液をよく分泌させて、消化を助け、胃や腸の負担を軽くすることで、健康維持に役立っていることはよく知られています。しかし、頭の働きを良くしたり、認知症の予防や治療にも役立つこともあるというのは本当でしょうか。
そういえば、アメリカのプロ野球の選手は試合中によくガムを噛んでいますが、彼らは噛むことによって集中力を増したり、精神を安定させることができると信じているようです。
確かに「歯ごたえ」のある物をゆっくりと噛み続けていると、しだいに心が落ち着いてきて、呼吸も深くなります。このときに脳波を調べると、非常にリラックスした精神状態を示すアルファ波になっていることが知られています。
ところで、噛む力は約30kgで、その圧力の大半は「コメカミ」の筋肉とその下の骨にそのまま伝わり、さらに頭蓋骨全体で受け止められています。そこで「コメカミ」に指を当ててアゴを動かしてみましょう。ピクピク動いていますね。
このように、物を噛んで筋肉が動くと、「コメカミ」に張り付いた無数の細い血管が伸び縮みして、そこに溜まっていた静脈血がしぼり出されて、まるでポンプで汲み出されるように、心臓に戻ります。その結果として、脳の血のめぐりがよくなって、身体の中の老廃物が取り除かれ、「栄養の補給」がスムーズにいくといわれています。
「よく噛む」という運動が、脳の血液を積極的に心臓に戻すポンプの役割を果たしているのです。しかも噛むときに使う筋肉もアゴの骨も、使えば使うほど丈夫になります。
そこで、老化とともに起る認知症の予防のためにも、食事のときは時間をかけて、よく噛むことが有効であると考えられています。
よく噛むことができるためには、歯が良くないといけません。歯や入れ歯の調子が悪いときは、早めに歯科医師に相談してください。また、定期的な検診をぜひ歯科医院で受けられることをおすすめします。