2015年11月
【火曜】 お酒の上手な飲み方
まず、アルコールの代謝についてお話します。
アルコールは、血液に溶けて肝臓に運ばれます。そのうち90%がアルコール脱水素酵素の働きでアルデヒドになり、さらに、アルデヒド脱水素酵素の働きで酢酸となり、全身を巡るうちに水と炭酸ガスとなります。残りの10%はそのまま尿や汗・呼気として、体の外に出されます。
アルコール脱水素酵素はアルコール摂取により増えていきますが、アセトアルデヒド脱水素酵素には3つのタイプがあり、酵素の活性が強い人、それが弱い人、そして活性が全くない人がいます。お酒に強いか弱いかはこれで決まります。自分がどのタイプであるかは、親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせによって決まり、後天的に変わることはありません。日本人の37~38%は活性が強い人、6~7%は活性が全くない人といわれ、日本人が欧米人に比べてお酒に弱いといわれるのにはこのことが関係しています。
次は、飲酒とがんの関係です。
飲酒は、口の中や喉、食道、肝臓、大腸、女性の乳房などのがんの原因になるとされています。またアルコールそのものに発がん性があります。特に飲むとすぐに顔が赤くなる人は食道がんになりやすいと言われています。飲酒で激しい頭痛が起こるのは、体がアルコールを毒と認識し、早く体から出そうとして血管を拡張させるためです。飲みすぎて二日酔いになった時は多めの水分補給、そしてコーヒーや蜆(しじみ)汁、ウコンなども良いでしょう。
一番厄介なのはアルコール依存症です。本人の健康問題と、周りの人との社会問題を抱えます。
初めのうちは、「飲む量をコントロールできない」「飲む時間のコントロールができない」など、様々な形で現れ、次第に連続飲酒になってしまいます。常に一定濃度のアルコールを体の中に維持しておくために、数時間おきに一定量のアルコールを飲み続ける状態です。
多量の飲酒は、痛風の原因である高尿酸血症や、肝硬変の原因であるアルコール性肝炎を引き起こします。飲みすぎて転倒し、怪我をしたり、風呂の中で寝込んだりして命を落とすことも報告されています。
アルコールの一気飲みは絶対禁止です。節度ある適度な飲み方として、おつまみは薄味のものにして、一日平均アルコール20g程度にしましょう。ビール中瓶では1本、日本酒では1合、25度焼酎では100mlに当たります。