2015年11月
【月曜】 急に視力が落ちたら
普段から目の健康に気を付けている方でも、急激に視力が低下することがあります。次の3点をお話します。
第1はストレス性の視力障害です。最近、小学生に急増している視覚障害で、稀に大人にも発生します。子どもの場合はストレスの原因が分かりづらいことがあります。原因が学校生活だけでなく、本人の性格や家族関係によることも考えられます。時には周辺の社会環境による場合があり、原因探求に総合的に取り組む必要があります。
第2は、蓄膿症や副鼻腔疾患から起こる眼の疾患です。鼻の病気が目の痛みを起こし、時には、眼の中の出血や視神経炎といった重い症状(鼻性視神経炎、副鼻腔炎関連眼疾患)にまで至ります。また、ステロイドの点鼻薬から眼圧が上がり、「続発性緑内障」が発生する場合があります。
第3は、使い捨てソフトコンタクトレンズによる眼障害です。「粗悪なカラコンは使っていない」「ワンデータイプだから安心だ」と思われるでしょうが、コンタクトを付けたまま海や川などで泳ぐことで角膜の障害が起こり、その時に薬が効かないアカントアメーバが侵入することがあります。泳ぐ時は必ず使い捨てコンタクトを外して泳ぎましょう。
さらに、視力低下を起こす2つの病気についてお話します。
「網膜静脈閉塞症」は、高血圧や動脈硬化による網膜の眼底出血です。「加齢黄斑変性症」は、網膜の中心部の文字を見る大切な場所に、老化による変性を起こす病気です。初期は文字などが歪んで見えます。どちらも中高年から高齢者に発症しやすい病気です。
これらの病気に対して、新生血管抑制薬(血管内皮増殖因子阻害薬、抗VEGF薬)を眼の中に注射する治療法が有効であることが証明されています。これまで行われて来た「網膜光凝固術」よりも出血の吸収には優れた効果を持つ治療法です。但し、①高額医療となること、②時には薬剤による全身への影響があること、③稀には脳卒中などの重い副作用があることなども考慮して、投薬の是非を眼科専門医と相談してください。
眼と心身の健康とは密接な関係があります。ストレスを軽くするライフスタイル、抗酸化作用や免疫力を高め、血液の循環を良くする食べ物を摂るようにしましょう。また、定期的な眼科受診を心がけてください。