2015年12月
【金土日】女性のアルコール依存症
お酒はわが国の食文化に深く根ざし、人々の交流の潤滑油としての役割があります。反面、過剰なアルコール摂取は人体に有害となります。
ストレス社会で緊張を緩和する目的で、女性の飲酒機会も増えてきています。日本人の7割はアルコールを分解する酵素の働きが強くないため、もっと少ない飲酒量と短い飲酒期間であっても、肝細胞、脳細胞が傷つく恐れがあるのです。女性の場合は、男性に比べて体重が少ないので、負担がかかりやすくなります。
お酒を飲むことで心の緊張は和らぎますが、人は心地よいと感ずることを習慣化します。飲まないと心が落ち着かず、毎日飲酒することを「精神依存」、飲まないと眠りが浅くなったり、汗をかいたりすることを「身体依存」と言います。飲んでいないのに手が震える、幻覚が出現するなどの「離脱症状」、いわゆる禁断症状を起こすことがあります。また、習慣性の飲酒は倦怠感、集中力や感情のコントロールの低下などを招きます。仕事でのミスや能率低下を引き起こし、うつ状態を悪化させます。
このようなストレスを和らげるためにお酒を飲むという習慣が続くと、アルコールで抑制されている状態が平常になってしまいます。そうなると、飲酒していない時には脳を興奮させる物質であるグルタミン酸の量が増えるため、「お酒が飲みたい」という欲求が高まります。飲酒をすればグルタミン酸の量が減少していくため、脳は興奮状態から解放されて、精神的に落ち着きますが、アルコールが抜けていくとまた落ち着かない状態になってしまうといった、悪循環になってしまいます。
また、アルコールは寝つきをよくしますが、途中で目が覚め、睡眠を浅くします。
アルコール依存の治療に用いる薬は、アルコールへの欲求による神経の興奮を抑える働きをして、飲酒をしなくてもグルタミン酸の量を減らすことができ、飲酒の欲求が制限できるようになります。
「私には飲酒のトラブルはない」「今度こそうまく飲める」「酒をやめてもいいことはない」「どうせ酒なんか止められない」等、間違った考えやこだわりで心身の健康状態を悪化させる前に、ぜひかかりつけの医師に相談のうえ、専門の医療機関を受診するようにしましょう。