2016年3月
【木曜】 うつ病と、うつ状態について
「うつ病」は、昔から「精神病と変わらない」という偏見がもたれやすい病気です。
その一方で、その偏見とは別の「うつ状態があればうつ病なので、まずは休養が大切」という誤解が最近増えています。例えば、職場から「休んでいるなら、精神科に行き診断書を書いてもらうように」と言われる例が増えています。
「うつ病」と、最近誤解されやすい「うつ状態」とは、別の病気であるため治療法も異なります。
昔から偏見の目で見られる精神病には「統合失調症」と「躁うつ病」の二つがありますが、昔よりも軽症化、つまり症状は軽くなっています。しかしなお、「治らない」という偏見は残っています。
この精神病の一つである「躁うつ病」は気分の障害で、「うつ病」はその気分の障害に含まれる病気ですが、「躁うつ病」とは違い、うつだけの時期が続く病気です。ただし、うつが長引いてみえるときには、実は躁の時期がある、つまり「躁うつ病」である可能性があるので注意が必要です。
気分障害である「うつ病」は、自分がそれまで得意としていた能力が下がり、それまで意欲をもってやっていたことがおっくうになります、そのような「うつ病」は、身体の病気と同じように、きちんと服薬して、休養をしっかりとれば、治る見込みは十分にあります。
この気分障害と異なり、「うつ状態」の多くは、神経症によるものです。
神経症は、自分の心と、職場や家族など環境との問で、いわゆるノイローゼの状態が生じる病気です。神経症を性格の問題と誤解しないでください。気分が憂うつになり、やる気が出なくなりますが、それが神経症による場合は、ただ休んでいても治りません。「うつ病」と治療法は異なりますが、薬が効果的な場合も多く、必ず治る病気です。
神経症以外にも、見逃してはいけない内科や外科的な身体の病気によっても、「うつ状態」は生じます。アルコールに依存して飲酒を続けることでも、うつは生じます。さらに生活が昼夜逆転し、日中自宅で横になりがちな生活からも、うつは生じます。
「うつ病」や「うつ状態」をご自分だけで治そうとしないで下さい。かかりつけの医師と精神科医との連携で治療を継続すれば、治る見込みが十分にある病気です。