2016年5月
【金土日】診療報酬改定で何がかわったか
国民皆保険制度の根幹でもある診療報酬とは、全国の病院や診療所、歯科医院などで受けられる医療の公定価格で、医療行為ごとに保険点数1点10円で設定されています。単なる医師・歯科医師の収入と誤解されがちですが、実際には、医療機関で働く看護師・薬剤師・検査技師など、たくさんの医療スタッフの専門的な技術料をはじめ、お薬・医療設備・検査などの費用が大半を占めています。保険診療の対象となる医療が広がり、点数が適切に引き上げられれば、国民が公的保険で受けられる医療の質と量が増えることになります。
全体でおよそ1500億円もの引き下げが行われた今年4月の診療報酬改定の特徴について、3点お話します。
第1は、入院医療から在宅医療への誘導です。看護師を手厚く配置している病院のベッド数を削減し、在宅医療を専門に行う医療機関を増やすなどの措置がとられました。しかし、重症の患者さん以外への在宅医療については診療報酬が引き下げられています。在宅医療を必要とする全ての患者さんが、今後も安心して必要な医療を受けられるか、心配されます。
第2は、かかりつけの医師・歯科医師や薬剤師を患者さんが持つことの推進です。確かに、自分の病気のことをよく分かってくれているかかりつけ医を持つことは大切です。しかし、1人の患者さんが抱える病気は必ずしも一つではありません。疾患によっては、内科や耳鼻科、整形外科など、複数の診療科の受診が必要となりますが、今回の改定ではかかりつけ医の紹介状なしで大きな病院にかかると、別途追加料金を支払うことになりました。政府が推進している「かかりつけ医」制度について、これから注意深く見守っていく必要があります。
第3は、一度に70枚以上の湿布薬を出すことが制限されたことです。肩・腰・膝など複数の痛みを抱える患者さんに対し、医師が必要と判断した枚数の湿布を出せなくなる恐れがあります。さらに政府は今後、一般用医薬品に類似したお薬を保険から外すことも検討しており、こちらも注意深く見守っていく必要があります。
兵庫県保険医協会では、いつでも、どこでも、誰でも必要な医療を安心して受けられるように、診療報酬の適切な引き上げや患者さんの窓口負担軽減など、医療改善のための取り組みを患者さんと共に進めています。医療機関窓口での署名などに、ぜひご協力ください。