2016年6月
【金土日】輸血とC型肝炎
日本においてC型肝炎感染者は人口の約1.2%~1.5%、150万人~180万人です。C型肝炎ウイルスは血液を介して感染しますが、空気感染や経口感染はしません。また、性交渉による感染や母から子への感染(母子感染)はごくまれとされています。
C型肝炎は1989年にウイルスが同定されました。その時からHCV抗体すなわちC型肝炎抗体検査という血液検査によってC型肝炎は容易に診断ができるようになりました。日本の感染者の多くは、C型肝炎ウイルスが発見される前の輸血や血液製剤、あるいは注射針が使い捨てになる前の注射針の使い回しなどで感染したものと考えられています。とりわけ、輸血による感染は、C型肝炎ウイルスと判明する以前の献血による血液を用いた手術などの感染で、日本のC型肝炎の40%を占め、最も多い原因となっています。1989年以降、献血者の血液のスクリーニングで、HCV抗体陽性者の血液は使われることなく破棄されていますので、その後、輸血によるC型肝炎感染は急速に低下しました。1999年からは、より感度の高い核酸増幅検査(NAT)で献血者の血液を対象としてC型肝炎ウイルスをスクリーニングする方法が採用されています。それ以降輸血によるC型肝炎感染はさらに低下し、その割合はほとんど0に近い数字です。今後も輸血によるC型肝炎感染は起きることはまずありません。血液を介する感染で問題となるのは、ピアスや入れ墨、覚せい剤などの回し打ち、あるいは不衛生な状態での鍼治療などがありますが、日本では多くはありません。
輸血によるC型肝炎感染に関連して、血友病患者に投与された血液凝固製剤(フィブリノーゲン製剤と第Ⅳ因子製剤)によるC型肝炎感染、いわゆる薬害肝炎は21世紀に入って日本において大きな社会問題となりました。厚生労働省の報告書によると、血液製剤が投与された9661人のうち1079人にC型肝炎ウイルス感染が確認されました。ただ、薬害肝炎被害者による訴訟は和解が成立し、被害者救済のための法律も2008年に制定され、社会的解決への道筋はつけられています。輸血による感染が気になる方は採血検査を受けて下さい。