2016年6月
【火曜】 下痢と薬局で処方される漢方
下痢とは、大腸の水分吸収悪化や、腸粘膜の分泌異常更進が原因となって柔らかい便が頻繁に排出される状態を言います。大きく分けて、漢方的にいう「陰の下痢」すなわち慢性の下痢と、「陽の下痢」すなわち急性の下痢があります。それぞれの下痢の特徴や注意点、使われる代表的な漢方薬についてお話ししていきます。
まず「陰の下痢」、慢性の下痢は、冷えによる腸の機能の低下により起こることが多く、お腹を温めると楽になります。さらっとした水溶性便が頻繁に出ます。この下痢には、「真武湯」「人参湯」がよく処方されます。冷え症で顔色が悪く倦怠感を訴える時に使用されます。特に食欲不振、胃症状を伴う場合、人参の力で胃腸の働きを高める効果のある人参湯が使用されます。
第2選択として、「人参湯」と「真武湯」の合剤(茯苓四逆湯)や、「人参湯」と体を温める「附子」の合剤(附子理中湯)を使うこともあります。
注意してほしい事は、今の症状の他、元々の体質で、漢方の選び方、効き目は違ってくる事です。最近はドラッグストアでも色々販売されていますが、不明点はしっかり確認してから使用してください。
次に「陽の下痢」、急性の下痢の原因は、ウイルス・細菌などの感染性、薬物などの中毒性、食品アレルギーなどがありますので、かかりつけ医を受診して下さい。夏の感染性胃腸炎で、水を飲むとすぐに吐き出し、吐いた後に激しい喉の渇きが生ずる、嘔吐と口の渇き(これを漢方では水逆といいますが)には、「五苓散」がよくつかわれます。
水溶性下痢を訴える場合は、「柴苓湯」「茵蔯五苓散」が勧められます。
五苓散のバリエーションとして、嘔吐に腹痛や下痢を伴う場合は胃苓湯、下痢が主体でこれに加え発熱、腹痛を伴う場合は「黄芩湯」が使用されます。熱っぽく、上腹部の違和感があり、お腹が、ごろごろなる時は「半夏瀉心湯」も使用されます。
最後に胃腸炎になっている時の食事についての注意点です。胃腸炎の時は粘膜が荒れていますので、胃腸を休ませてあげることが一番です。こまめに水分補給をして、食事はしばらく控えた方が良いかもしれません。胃腸症状が良くなったらお粥など消化の良いものから食事を再開してください。
いずれの場合でも長引くようなら、医療機関を受診しましょう。